興奮状態にあるときには空腹を感じにくくなります。これは脳が集中するために空腹になっていることに気づかなくなるからだと説明されていた時代もありますが、自律神経の機能が明らかになるにつれて、理由も明らかにされてきました。
胃腸の働きは自律神経に影響されやすくて、食事をしたあとにはリラックス状態になっていることで胃液や胆汁が多く分泌され、消化されたものが効果的に吸収されるようになっています。ところが、興奮した状態になると胃液が分泌されにくくなり、消化が抑えられ、吸収も遅れるようになりました。そのために、空腹を感じにくくなるということです。
交感神経は身体を活動的にさせるものであるため、分泌や収縮は盛んにさせる働きをするのが原則となっています。ところが、胃と腸は逆に副交感神経によって盛んになっています。
そして、交感神経のほうが抑制の働きをしています。交感神経は身体を活発に働かせるためのもので、消化・吸収は逆に身体を働かせるためのエネルギー源を取り込むための働きであることから、副交感神経が担っています。
また、膵臓は副交感神経によってインスリンの分泌量が高まり、交感神経によってインスリンの分泌が抑えられます。これによって夕方以降の休息の時間帯には消化と吸収が進み、インスリンの分泌によって体内へのブドウ糖と中性脂肪の取り込みが進んでいきます。
自律神経の働きは波のように強弱があって、交感神経の働きが盛んになっているときには副交感神経の働きが抑えられ、逆に副交感神経の働きが盛んになっているときには交感神経の働きが抑えられるという関係になっています。
消化は胃だけでなく、食べ物を噛むところから始まっています。噛むと唾液が分泌されますが、交感神経は唾液の分泌を抑え、逆に副交感神経は唾液の分泌を盛んにします。興奮しているときには唾液が粘つくようになるのは、交感神経の働きが盛んになることによって消化のために必要な唾液が増えてくることが影響しています。
交感神経は消化液の分泌を抑え、副交感神経は消化液の分泌を盛んにする働きをしています。腸の蠕動運動を起こしている筋肉は交感神経によって動きがゆるやかになるために便秘になりやすく、交感神経は腸の筋肉の動きを盛んにするので便通をよくする作用があります。
もともと腸の働きがよくない人の場合には、副交感神経の働きが盛んになると腸の筋肉による蠕動運動が盛んになりすぎて下痢になりやすくなります。また、交感神経には排出を抑制する作用があり、逆に副交感神経には排泄を促進する作用があります。
自律神経の調整は、体調をコントロールするために優先させて行わなければならない重要な事項なのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕