偽る脳力51 四苦八苦の解釈

戦略参謀として仕事で面談をしていると、四苦八苦のことを“死苦八苦”と勘違いして、死ぬような思いをする八つの苦しみがあり、それくらい自分は苦しんでいるという“苦しみ自慢”をする経営者がいます。

それだけ頑張ってきたことを話し、もっと頑張って苦しみたいということを目を輝かせて滔々と話してくる人もいます。

苦しむほど自分が磨かれる、人間として高みに登ることができるという“自力本願”の発想の中が多いのですが、私のベースとなっている浄土真宗では“他力本願”こそが真理であることから、苦しむことは本来の姿ではないという発想で多くの人に話をさせてもらっています。

四苦八苦のことを「四苦×八苦」と考えて32もの苦しみがあると思い込んでいた人がいて、その人に対して「四苦+八苦」で12の苦しみでしかないと説明するコンサルタントもいました。実際の四苦八苦は32でもなければ12でもありません。「四苦+四苦=八苦」が仏教的な正解です。

四苦八苦の四苦は生・老・病・死の生きている限り避けることができない苦しみのことで、この他に愛別離苦(愛する人と別れなければならない苦しみ)、怨憎会苦(憎しみあうものと会わなければならない苦しみ)、求不得苦(求めて得られない苦しみ)、五蘊盛苦(激しい欲望に燃え盛る肉体を持って生きていくことの苦しみ)の四苦があり、これを合わせて八苦となります。

五蘊盛苦はわかりにくいので、少しだけ追加説明をしておくと、身体のすべての働き(五蘊)が盛んであるが故に苦しみが次から次へと湧き上がってくることを指していて、自分の心や体が思い通りにならない苦しみと言い換えることもできます。

調子よく進んでいると、自信を持ってもっと進めたい、拡大させたいと考え、拡大こそが自分の価値を高めることになるということを、それこそ自信を持って発言する経営者がいます。これは当たり前のことかもしれませんが、そのための苦しんでいることを誰もわかってくれないと嘆き、その苦しみを訴えてくることもあります。

その苦しみこそが浄土真宗の開祖の親鸞聖人の説く“自業苦”であり、これが他宗の地獄と同じことになります。

そのような場面では、「それが五蘊盛苦であり、その苦を自覚しないと、さらに求不得苦になる」と伝えています。苦しみは自分が生み出していることに気づかないと、八苦のすべてを味わうことにもなりかねないとの考えです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕