偽る脳力59 初めてのクリスマスケーキ

小学生になったときの父の勤務先は山奥の村で、都市部とつなぐバスはあっても1日に5本程度で、1時間半ほどはかかる距離でした。村で菓子を売っているのは1店舗だけで、テレビコマーシャルで見たチョコレートやキャラメルは、バスで商店街に出たときに初めて現物を見るというような地域でした。

そんなところで育ったのに、クリスマスだけはホールケーキを食べることができました。同級生の家でもホールケーキを食べている家がなかったわけではないのですが、話を聞くとイブに半分、クリスマス当日の半分という感じでした。ところが、我が家はイブに全部を食べて、当日には別のアイスクリームケーキを食べていました。

イブのケーキは父の実家の米屋と母の実家の寺からの支援で買ったもの、アイスクリームケーキは父の知人の会社からのプレゼントでした。それは転校先(父の転勤先)でも小学生の間は続きました。

中学生以降は、他の家と同じようにホールケーキを2日に分けて食べるようになっていたので、クリスマスといえばケーキはつきものという感覚でした。

高校は父の実家の近くの学校に通っていて、同級生に菓子屋の娘がいました。たまたまクリスマスに親元に帰れず、母の実家で過ごすことになったのですが、クリスマス当日の夕方にはケーキの売れ残りがあって、それを安く買わせてもらって、バスで1時間ほどの母の実家に行きました。

クリスマスケーキはイブに食べていて、連続でもよいかという思いだったのですが、ケーキを持って入ると、祖母と叔母が驚きの顔で迎えてくれて、「クリスマスに初めてケーキが食べられる」と言われたときには、私のほうが驚いてしまいました。

小学生のときからクリスマスにケーキを食べることができたのは母の実家の支援があったからで、寺でもクリスマスケーキを食べているものと勝手に思い込んでいました。
仏教だからキリスト教の祝い事のケーキを食べて悪いことはないと思っていたのですが、厳格な住職の祖父の教えに従って、クリスマスケーキは食べてはこなかったということでした。

そのときには祖父は亡くなっていたのですが、私が寺で過ごした3年間は、近所の子どもがケーキ(ショートケーキらしい)を食べているのに可哀相ということで、イブと当日は和菓子が食べ放題の日だったということを聞きました。

そのことに関しては、まったく思えていなくて、クリスマスにはケーキということも知らず、そういえば和菓子の食べ放題の日があったということを思い出したくらいです。

そのときをきっかけにして、12月24日にはケーキを食べるようになったと後になって祖母から聞きました。ただメリークリスマスの言葉もなく、いただきますと合掌していただく仏教式で、クリスマスを祝ってのことではないのは貫いていたとのことでした。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕