糖尿病は尿の中に糖が多く含まれることでも、血液中のブドウ糖の量が増えすぎることでもなく、ブドウ糖を全身の細胞に取り込んでエネルギー化する能力が低下することを指しています。ブドウ糖を細胞に取り込むために必要なホルモンがインスリンで、膵臓から分泌されています。
血液中のブドウ糖が多くなりすぎた高血糖状態が長く続くことによって、膵臓はインスリンを出し続けることになり、疲弊するとインスリンの分泌量が大きく低下して、血糖値が低下しなくなります。
これが主に指摘されていることですが、インスリンが多く分泌されていても、血糖値が下がらない例は日本人には特に多くみられます。細胞のインスリンに対する感受性が低下して充分に取り込まれなくなる状態で、これはインスリン抵抗性と呼ばれています。
インスリン抵抗性は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)によって起こりやすいことが指摘されています。体脂肪が多く蓄積されることによって、脂肪細胞からアディポサイトカインという生理活性物質が多く分泌されますが、このアディポサイトカインがインスリン抵抗性の主な原因とされています。
日本人は高血糖状態になるほどブドウ糖が含まれる糖質を摂ってこなかったことが原因とされていますが、原因は、それだけではありません。インスリンには肝臓で脂肪を合成する働きもあり、肉類などエネルギー量が多いものを歴史的に食べてきた民族はインスリンの分泌量が多くなっています。
肉食が多い民族はインスリンの分泌量が多いので、脂肪を多く作る能力が高く、その脂肪を多く脂肪細胞に蓄積する能力も優れています。体脂肪は重要なエネルギー源で、エネルギー量も1gあたり約9kcalと、同じ重量の糖質とたんぱく質の約4kcalに比べて2倍以上のエネルギー量があるので、脂肪に変えて蓄積する仕組みがあるのです。
それに対して日本人は歴史的に肉類を多く食べてこなかったため、インスリンの分泌量が少なくなっています。そのような体質であるのに、肉類を多く食べる食生活を続けていると膵臓が疲弊してインスリンが分泌されにくくなるのは仕方がないことです。このような仕組みがあるから、糖尿病が進行すると太りにくく、やせるようになってくるのです。
そのような身体のメカニズムがあり、日本人はインスリンが不足しやすいのに、血糖値が上昇しなければ糖尿病にはならない、改善できると自分を偽って、たんぱく質と脂肪が多く含まれている食品を食べようとする人が多いことも、糖質制限がヒットしている理由といえます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕