話を盛る人の心理状態について、前回の例は話を盛って接触してきたのは1人だけでしたが、同じようなことを言う人に何人にも出会ったことがあります。
それはサプリメント指導の制度に関することで、「サプリメント指導の資格認定制度を認定団体の会長に提案したのは自分だ」と話している人には何度もあったことがあります。一度ならず今、思い出せるだけでも4回はありました。それだけに、それは裏付けを取る必要もなく、話を盛っていることは、すぐにわかりました。
名前のあがった団体は、医師と栄養士による研究学習組織の日本臨床栄養協会で、確かに2002年に厚生労働省による「保健機能食品等に係るアドバイザリースタッフの養成に関する基本的考え方について」という通知に従って資格認定を行っていました。いくつかある団体の中で認定数が最も多かったこともあり、自慢するにはよい対象でした。
提案したのは自分だというのは、話を盛ったことだというのは簡単にわかります。というのも、一つには通知の委員会に、私も委員として加わっていたからです。
認定団体の会長に提案をする必要はなく、通知が出されることがわかったときに、すでに認定団体では準備を始めていました。委員会には、その団体の役員の1人も参加していました。その団体のトップが他の人から言われないと知らなかったということは絶対になかったのです。
もう一つは、日本臨床栄養協会の当時の副会長が代表を務める研究所に、私も所属していたことです。代表の依頼で健康食品業界のリサーチをして、多くの裏付け資料とともに、会長と副会長に届けたのは私だからです。
資格認定を会長に提案したのは自分だと話している人には、そのようなことは言わずに聞くだけにしていました。私が通知に基づいた資格認定をする国立の研究機関で法律講師をすることになり、そのことを知ったときから、話を盛った人たちは私には近づかなくなりました。気まずいと通り越した感情があったからでしょう。
健康食品の業界は、自分の会社、商品を立派に見せたいという気持ちが特に強いところではあるものの、なぜ何人もが同じことを言うのか、その疑問も「偽る脳力」の研究のよい例となりました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕