ダイエットの意味を正しく知ると、最も健康を維持できる状態になることを目指すべきだということがわかってきますが、臨床栄養の世界では依頼のほとんどは体脂肪を減らすことであるので、「ダイエット=やせること」は間違いではないような感じがしてきます。
厚生労働省が特定健診・特定保健指導としてメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策を打ち出したときに、食事と運動によって内臓脂肪を減らすことを健康づくりの最重要項目として掲げたことから、「健康=体脂肪減少」が第一に考えられるようになり、ダイエットは健康づくりの条件とされるようになりました。
肥満と呼ばれるほど内臓脂肪を多く溜め込んでいても、検査によって高血圧でも糖尿病でも脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症)でもなければ問題はないとされていた時代から、今は大丈夫であっても動脈硬化のリスクが極めて高い状態であって、できるだけ早く体脂肪を減らすことが重要という時代に変わりました。
特定健診・特定保健指導は2008年から始まり、同じ年に日本メディカルダイエット支援機構が内閣府に特定非営利活動法人(NPO法人)として認証されたことから、私たちの活動も内臓脂肪を減らすことが中心と周囲から見られていました。
ところが、「太ることもダイエット」ということを掲げて、メディアなどに登場したことから、その意味の説明を何度も求められました。厚生労働省の意向に逆らっていたわけではありません。
体脂肪を減らす必要がない人がダイエットをしたり、体脂肪を減らすことで免疫が低下するなど健康を害する人が一方でいることを示して、“人によっては”という言葉を先につけて「人によっては太ることもダイエット」と言い換えるようになりました。
やせるためのダイエットと逆のことをすれば簡単に太ることができるものの、そのときに増えているのは体脂肪だけです。体脂肪の割合を変えないで筋肉を増やすことが大切なダイエット法という考えで、筋肉を増やすことによってエネルギー代謝を高めて、その結果として余分な体脂肪をエネルギーとして消費することが研究の中心テーマとなりました。
このことが知られるようになって、何人もの方から私に教えたのは自分だという声がありました。それを否定するのではないのですが、誰か一人の考えを述べていたというよりも、臨床栄養の師匠、運動科学の師匠、未病医学の師匠、東洋医学の師匠、サプリメント科学の師匠などと一緒に活動していく中で、すべての方から少しずつ学び、考えをまとめていったことです。
誰かの言葉を、そのまま伝えることは、文章書きを生業としてきた身には許されることではなくて、自分なりに解釈して、誰もが理解できるようにして伝えるのが自分の役割だと考えてのことでした。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕