偽る脳力74 時間が短くても体脂肪が減少

運動をやり慣れていない人は、同じだけの運動をしても、運動をし慣れている人に比べると酸素を取り込んで有効活用する能力が低くなっています。また、運動をし慣れた人に比べると、同じ負荷の運動であっても最大酸素摂取量が高まりにくくなっています。

ただ、長く運動をすればよいというのは間違いだということを伝えたくて、「運動は時間だけでなく質」ということを言うようにしています。

最大酸素摂取量は、1分間に体重1kgあたり取り込むことができる酸素の量で、一般には全力で運動をしたときの酸素量を指しています。最大酸素摂取量は運動をすれば高まるというものではなく、最大運動の60%程度の有酸素運動を繰り返していると徐々に最大酸素摂取量が高まります。

そして、運動を終えた後でも普段よりも酸素摂取量が増え、脂肪代謝によるエネルギー産生が高いまま続くようになります。そして、運動のエネルギー源の割合が変化して、脂肪酸が優先的に使われるようになります。

この身体的な変化はEPOC(excess post-exercise oxygen consumption)効果と呼ばれる現象で、アフターバーン(after burn)効果とも呼ばれています。呼吸と心拍数を整えるために酸素の摂取と消費が高まり、エネルギー消費が継続することを指しています。

EPOC効果は、運動をしていないときにも脂肪代謝が高まるということで、休息中も就寝中にも効果が高まります。有酸素運動の時間が短かった人は、EPOC効果が2時間ほどだったのが、最大酸素摂取量の60%ほどの運動を継続させることで12時間ほどにも長引かせることが可能です。その効果を得るためには、1日に2回は有酸素運動をして1日中、脂肪代謝が盛んになるようにすることがすすめられます。

個人差はあるものの、毎日、有酸素運動を続けることによって24時間まで高めることができる人もいます。こうなると1日に1回だけの有酸素運動で、脂肪代謝を高めることができることになります。

EPOC効果は、個人差はあるものの、高まる消費エネルギー量は50〜120kcalとされています。50kcalであったとしても15分間のウォーキングに相当するため、動かない状態でも身体を動かしているのと同じエネルギー消費の効果が得られます。

ただし、運動を続けていると最大酸素摂取量が高まって、以前と同じ負荷の運動をしていても、最大酸素摂取量の60%に達しなくなるということは普通に起こります。最大酸素摂取量の60%というのは、なんとか会話をしながら続けられる強度を指しているので、これを目安にして有酸素運動に取り組むようにしたいということを伝えています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕