免疫の強さは、免疫細胞の数と活動能力が重要となりますが、それだけだけで決まるものではありません。男性と女性を比べると、がんで亡くなる人の数は男性では女性の1.5倍ほどになっています。その理由の一つとして性ホルモンの違いがあげられます。女性ホルモンは免疫細胞のリンパ球のB細胞が抗体を作る力を高めるのに対して、男性ホルモンは逆に抗体を作る力を弱めていくことが知られています。
男性はストレスに弱いことが指摘されていますが、精神的なストレスが高まると病原菌などを察知するレーダーの能力が落ち、免疫細胞の働きも低下していきます。男性はストレスがかかる場面にいることが多いうえに、そもそもストレスに弱い脳の構造となっています。脳は創造的な働きをする右脳と、機械的な働きを得意とする左脳に分けられます。右脳と左脳は脳梁というブリッジで結ばれていますが、女性の脳梁の太さは男性の2倍ほどもあり、左右の脳をバランスよく使うことができるために、ストレスがたまりにくくなっているのです。
免疫は40歳ころから低下していくため、免疫の中心は免疫細胞を強化する胸腺から腸管に移動していきます。腸管には無数の繊毛の突起があり、食物と異物が混入して入ってくる腸壁では、栄養成分と異物が識別されています。一つひとつの繊毛にはリンパ管が通っていて、この中で白血球やリンパ球が働いています。腸管の粘膜にはリンパ管とつながっているパイエル板と呼ばれる白血球やリンパ球が集まっている部位があり、異物が入ってくるとパイエル板のマクロファージが働き、異物の情報をリンパ球などに伝えます。その情報を受けた免疫細胞が働くことによって全身の免疫が高まっていきます。
腸内には約1000兆個の腸内細菌が棲みついているとされていますが、腸内細菌のうち悪玉菌が増えると腐敗が進み、便が黒く、硬くなり、便通が悪くなっていきます。そのために腸管に汚れが残るようになり、腸管免疫が腸内の異物と触れにくくなり、その結果、免疫が働きにくくなります。また、悪玉菌は腸内の腐敗を進めることによって有害物質(毒素)を発生させますが、この有害物質は腸壁から水分とともに血液中に取り込まれていきます。この有害物質を処理するために免疫細胞の働きが向けられる分だけ、他への免疫の対応が遅れ、全体的に免疫力が低下することになるのです。