別腹のメカニズム

就寝前に食べるとエネルギーが使われる時間が短いことから太る原因であることが指摘され、少なくとも就寝の3時間前には食べ終えることがすすめられます。しかし、空腹を感じてスイーツを食べて、血糖値が高いまま寝ることもあるはずです。しかし、これは別の理由によって太る原因となってしまいます。
就寝中にもエネルギーが必要になることから脂肪細胞に蓄積された中性脂肪が分解されて、脂肪酸が血液中に放出されています。しかし、血液中にブドウ糖が多い状態だと、ブドウ糖は脂肪酸よりも早くエネルギー化されることから、中性脂肪の分解が進みにくくなります。
こういったことがあることから、就寝前に食べないようにしようと思っても、飲酒をした後には強い空腹を感じてスイーツや、エネルギー量が特に多いラーメンが食べたくなってしまいます。これは肝臓でアルコールの分解を優先することから、肝臓の大事な働きであるブドウ糖の調整ができなくなり、血糖値が急に下がるからですが、肝臓はエネルギー源の中性脂肪とグリコーゲンを蓄積しています。血液中の脂肪酸が不足したときには中性脂肪を分解して脂肪酸を、ブドウ糖が不足したときにはグリコーゲンを分解してブドウ糖を血液中に放出して血液中の量を調整する働きをしています。
ところが、アルコールは脳や重要な器官の働きを低下させるので、できるだけ早く分解するために肝臓からのブドウ糖の放出が少なくなってしまいます。そのために血糖値が下がり、実際には多くの糖質を摂っていても脳が空腹を感じるために、食欲が増してくることになります。ラーメン屋には閉店時間があるものの、24時間営業のコンビニが近くにあると、いつでもスイーツを買って食べることができます。これは“偽りの空腹”であることを理解して、我慢するに越したことはありません。
多くの量を食べているのに、おいしいものが目の前にあると食べたくなり、実際に食べてしまうことは“別腹”と呼ばれています。別腹は満腹と感じていても、血糖値が上昇して満腹中枢が刺激されたために、胃には食べ物を入れるだけの空間があるからと説明されていますが、これ以上は入らないというほど胃の中に食べ物が入っていても、スイーツが出されると食べることができます。その理由としては、胃から分泌され、視床下部に作用するペプチドホルモンのグレリンの働きがあげられています。
人間は飢餓状態を生き残ってきたことから、どれだけ満腹状態であっても次に食べられるのが、いつになるかわからないので、少しでも多くの量を食べようとする仕組みが備えられています。その一つがグレリンで、満腹中枢が働いていても食べたい気持ちが高まるとグレリンが分泌されます。グレリンが分泌されると、胃が蠕動運動を始め、まだ充分に消化されていないものを腸へと送り出して胃の上部に空間を作ります。これが別腹の正体で、おいしいものなら、いくらでも食べられるようになるだけに、デザートを食べることが初めからわかっているときには食べすぎないようにしなければならないということです。