医療費削減のための一歩の価値

国民がウォーキングによって健康になれば、医療費が抑制できるという発想から、厚生労働省の研究班が、生活習慣病予防も目的にして“一歩の価値”を試算しています。
この研究の基礎調査に協力したのは製薬会社の社員1000人で、事前に健康状態を調べたうえで、1年間のウォーキングの実施によって、歩数による健康状態の改善、個々の医療費の変化が調べられました。ここで得られた調査データから、生活習慣病にかかる割合と医療費の関係を割り出し、1人が普段より1歩多く歩くことによって、どれくらいの削減ができるかの試算が行われています。
その結果、1歩で0.00147円の医療費の削減となりました。厚生労働省の「健康日本21」では1日に1000歩を増やすことを数値目標として掲げているので、これに合わせると「0.00147円×1000歩=1.47円」で、1週間では「10.29円」です。調査に協力した企業の1000人だと1日に「10,290円」で、これを1年間継続すると「10,290円×52週=535,080円」になります。
住民の1万人がプラス1000歩の活動に参加したとすると5,350,080円と、医療費の削減の効果らしきものが見えてきます。住民参加のウォーキングイベントを開催して、週に1回、1万歩を歩くようにした場合には1年間で「0.00147円×週17,000歩×10,000人=12,994,800円」となります。
イベントといっても集団で歩く必要はなくて、歩数計(万歩計)を参加者に配布して、その記録を報告してもらうという方法もあります。歩数計は安いものでは1,000円ほどなので購入予算だけなら1万人分で100万円です。一定の歩数に達した人は医療費削減に協力したということで表彰や景品を渡してモチベーションを高めるという方法もあります。
歩数計をつけるだけで、1日の歩数が2,000歩増えたという調査結果もあります。自分で記録するだけでなく、記録を他人に発表する、それを褒めてもらえるということが自分で積極的に歩こうとする行動につなげていくことができます。
地域の健康づくりのために活用されている一歩の価値とは、実は桁違いの低い結果となっていますが、それでも当初の活動資金を作り出すのは充分な金額となります。
ここでは医療費の削減という言葉を使いましたが、医療に携わる人たちからの反発も考慮して、外向けの発表では“医療費の適正化”と言い換えられています。実質上は変わりがないわけですが、この一歩の価値の試算の結果を健康づくりの“資産”に変えていくことで、より多くの成果を得ることが期待されています。