危ないときに限って相談に来ない健康食品業界

「壁の向こう側に落ちないように」という言葉があります。その場合の壁は刑務所の壁のことで、壁の上を歩いていて、外側に落ちるようなことがあっても、内側に落ちると大変なのでと注意を呼びかけるときに使われています。これは政治家の世界で使われることが多いようで、実際に国の政治家から直接聞いたこともあります。また、落ちてしまった人も知っています。そうなったら政治家生命はお終いですが、私が法律講師として関わってきた健康食品業界にも同じように「落ちないように」と何度も口にしてきました。
というのは、法律講師といっても制度の弱点、法律の抜け穴を見つけて攻めてくる業界に対して、取り締まる側の仕事を手伝っていたことから、「なんとか逃れる方法はないか」という相談を受ける機会が多かったからです。
広告の表現を法律をギリギリ守るように修正するのは比較的簡単なことですが、それをしてあげると自分たちで判断できなくなることから、法規制の理由や監視指導のマニュアルの意味するところ、それを用いた実際の規制と、違反と判断されたときの厳しい処分について話をしました。そこが理解できていないと、制度が少し変わっただけ、取り締まりや処分が変わっただけで対応ができなくなるからです。
教えたとおりのことを守っているときには、具体的な広告などの表現について相談してくるのですが、「壁の向こう側に落ちないように」しなければならない状態のときに限って、何も相談をしてこなくて、そのまま落ちてしまった、という会社の数は両手の指でも足りないくらいです。そんなにも危ない会社と付き合ってきたのか、と聞かれることもありますが、講習会に参加する会社のほとんどがチャンスさえあればと規制の範囲を超えることを考えているということです。
そのようなことが起こるのも、原因は規制のほうにあります。規制は医薬品を取り締まる法律に基づいて行われていて、健康食品とサプリメントは医薬品的な効能効果を一切述べることができません。そのため、優れた商品も、そうでない商品も同じような表示しかできず、その違いを消費者が見抜くことができないからです。そのため、よさそうな印象を与える表示をしているものを選んでしまうということが大きな原因になっているのです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)