卵焼きの日本海側の味の違いの境界線は富山県と石川県で、富山県が砂糖に醤油、石川県が塩に出汁(だし)の味付けが多くなってます。太平洋側の境界線は愛知県が砂糖に醤油、三重県が塩に出汁で、愛知県と富山県の間の長野県は砂糖に醤油の味付けが基本です。
東側では卵焼きは、そのまま食べますが、西側では卵焼きの味が薄いと感じたときには醤油をかけるという、東側の人から見たら驚きの食べ方をしています。
卵焼きの味付けは全国に例外地域があって、それぞれ理由があります。京都府と滋賀県は文化的には関西圏ですが、砂糖と醤油の甘い味です。文化的には出し巻き卵の地域なのですが、砂糖が多く消費された京都の影響を受けて、家庭では甘い味が主流となっています。生まれたところや長く住んでいた地域の影響は味に色濃く出るので、京都府民、滋賀県民であっても塩と出汁という家庭もあって、混在している感はありますが、大きく分類すると甘い味が優勢となっています。
長崎県は全体に甘い味付けで、甘い料理ほど「長崎に近い」、甘さが控えめになると「長崎から遠い」と表現されています。長崎は貿易港で海外から砂糖が持ち込まれ、カステラや金平糖などの菓子文化の影響もあってか、卵焼きも甘い味付けです。福岡県も甘い味付けで、これは裕福な地域に砂糖が流れてきたことに関係しています。宮崎県と鹿児島県も甘い味付けで、これは奄美のサトウキビから作られた黒砂糖が多く流通してきた歴史と関係しています。
香川県は伝統的な製法が守られている砂糖の和三盆の産地で、そのために甘い味付けの卵焼きです。徳島県は大阪府の影響を受けていて、全体的には塩に出汁の卵焼きですが、香川県に近いところでは甘い味付けも食べられています。
他には山口県と広島県が甘い味付けが主流で、これは福岡県からの流れのようです。私が移住した岡山県は、主流は塩に出汁の味付けですが、移住前に15回も訪れていて、そのときの経験では、ホテルや旅館の朝食の卵焼きは遠くから来る人のことも考えてか、両方の味付けが用意されていました。地域的には塩と出汁の文化なのですが、家庭では甘い味付けです。私が新潟県、妻が京都府の生まれで、出会ったのが東京で、そのまま甘い味付けの卵焼きを食べています。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)