「第3の矢」は“三本の矢”とは違っています。本題の前に“三本の矢”について記しておくと、少なくとも漢数字と洋数字という単純な違いではありません。
三本の矢は戦国武将の毛利元就が三人の子どもの隆元、元春、隆景に授けたとされる教えで、3本の矢を持って来させて、「多くの矢を一つにして折り足らんには細き物が折りがたし」と述べ、兄弟が心を合わせて行動するように遺言したと伝えられています。
意味としては、「たくさんの矢を一束にして折ろうとすると、一本一本は細くても折るのは難しい」ということです。これは『常山紀談』に記された元就の臨終の際の言葉だとされていますが、史実ではなくて、元就が書いた『三子教訓状』が元になった逸話というのが有力な説です。
ちなみに、大相撲の大波三兄弟(荒汐部屋)の若隆元(長男:本名は大波渡)、若元春(次男:本名は大波港)、若隆景(三男:本名は大波渥)は、毛利三兄弟の名前にちなんでいます。
これと間違われることがある「第の3の矢」は、今でこそ間違い、勘違いと言われるところでしょうが、いつしか時期が経つと“死語”とされるかもしれません。というのは、このきっかけとなった政治家は不幸な事件で亡くなり、そこから政権が3代に渡って引き継がれることで、だんだんと忘れ去られる環境になりつつあるからです。
3本の矢はアベノミクスを象徴する言葉で、「どれだけ真面目に働いても暮らしが良くならない」という日本経済の課題を克服するために、安倍政権によって「デフレからの脱却」と「富の拡大」を目指して発せられました。
「デフレからの脱却」と「富の拡大」を実現する経済政策がアベノミクス「3本の矢」が、次の3つを示しています。
第1の矢「大胆な金融政策」市場のお金を増やしてデフレ脱却!
第2の矢「機動的な財政政策」政府支出でスタートダッシュ!!
第3の矢「民間投資を喚起する成長戦略」規制緩和でビジネスを自由に!!!
この3本の矢を放つことによって、持続的な経済成長(富の拡大)を目指すもので、国内総生産の成長率3%を掲げました。
「第1の矢」では、金融緩和で流通するお金の量を増やして、デフレマインドを脱却するということを掲げて、“マインド”ということで、これは達成できたかもしれません。
「第2の矢」では、約10兆円規模の経済対策予算によって、政府が自ら率先して需要を創出するというもので、これも可能なことでした。
これに続く「第3の矢」は、規制緩和等によって、民間企業や個人が真の実力を発揮できる社会へ、という目標が掲げられました。これが実現できていれば、アベノミクスは成功と評価されるところですが、そうでなかったのは歴史を紐解くまでもなく明らかなことです。
第3の矢では、「人生100年時代」から創造される成長産業、一億総活躍、若者のチャレンジ、女性活躍社会、少額投資非課税制度(NISA)、海外の成長を取り込む観光立国などが目指されました。
この成否については、徐々に明らかにさせてもらいます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕