フレイルは高齢者の身体機能の低下を指す用語で、日本語では虚弱とも訳されています。運動不足から筋力が低下し、活動量が減るために食事量が減り、たんぱく質の摂取量が減ります。そのために筋肉量が減りやすくなるといった悪循環にもつながります。
食事量が減る原因は活動量の減少だけでなく、口腔機能の低下などの歯科分野の影響も考えられます。口腔機能の低下によるフレイルは、特別にオーラルフレイルと呼ばれています。これは口(オーラル)のフレイル(虚弱)という意味の造語です。
オーラルフレイルは大規模健康調査(縦断追跡コホート研究)などによる厚生労働科学研究によって示されたものです。オーラルフレイルは健康と機能障害の中間と位置づけられ、可逆的であることが大きな特徴してあげられています。
口腔機能の低下に早めに気づいて、適切な対応をすることで、健康状態に戻すことができます。オーラルフレイルの始まりとしては、滑舌低下、食べこぼし、わずかに咽(む)せる、噛めない食品が増える、唾液の減少、口の乾燥などの小さな変化であり、見逃しやすいことが多くなっています。それだけにオーラルフレイルの特徴を知り、早期に気づくことによって、口腔機能の健康状態を保ち、健康の維持・増進にもつなげることができます。
歯科治療が必要な状態を放置したことによって歯が欠ける、抜けるということがあると、それまで噛むことができたものが噛めなくなることがあります。そのため、食べやすくて軟らかいものを選択するようになり、軟らかいものを食べる習慣となります。
そのために噛むために必要な筋肉を使わなくなっていき、噛む機能が低下していくようになります。噛む機能の低下によって、さらに軟らかい食べ物を食べるようになって、さらに機能が低下していくという“負の連鎖”を引き起こします。
そのような状態はオーラルフレイルだけでなく、身体全体のフレイル、心身の健康状態にもつながるだけに、オーラルフレイルのサインに早く気づくことが大切になります。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕