噛む噛むeverybody39 咀嚼による食後の糖代謝

よく噛んで食べることによって消化が進み、食後の糖代謝が促進されることは以前から知られていました。具体的な数値についての研究が複数進められていて、今回紹介するのはキユーピーと早稲田大学が共同して実施した研究成果です。

研究テーマは、野菜を「咀嚼して食べるとき」と「咀嚼せずに食べるとき」の食後の代謝への影響でした。

試験は19人の健康な成人男性を被験者として、咀嚼条件(千切りキャベツ+ゼリー飲料)と非咀嚼条件(キャベツ粉砕物+ゼリー飲料)に分けて行われました。ゼリー飲料は血糖値を上昇させるもので、噛まずに摂取できる食品です。

食べ始めを0分として、0分、15分、30分、45分、60分、90分、120分、180分後に、それぞれに条件で採血を行い、血糖、インスリン(血糖値を下げるホルモン)、インクレチン(インスリンの分泌を促進するホルモン)の血中濃度が調べられました。

インスリンとインクレチンは血糖値変動メカニズムの指標で、食後90分までの経時変化を比較すると、インスリンとインクレチンの値が咀嚼によって高まることが確認されました。その一方で、血糖では明らかな差は確認されていません。

その結果から、よく噛んで食べることは血糖値を下げる作用があるインスリンの分泌を促進することがわかりました。

また、食事をするときには野菜を先に食べる“野菜ファースト”が、インスリンの分泌を促進させて血糖値を安定させる可能性が示されました。

インスリンは血糖値の上昇に応じて多く分泌されることから、糖質が含まれたものを減らすことが考えられがちですが、同じ分量の糖質を摂っても、よく噛んで食べることで血糖値の急上昇を抑えられることが明らかになったということです。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕