四字熟語でコロナ後を考える13「後利夢中」

「ごりむちゅう」とパソコンに打ち込んで変換キーを叩けば、「五里霧中」と変換されます。五里霧中は、五里にもわたって先が見えない霧の中ということから、「物事の事態がつかめず、この先どうなるかわからないこと」を指しています。新型コロナウイルス感染症が感染拡大している段階では、どんな対策をすればよいのかわからず、まさに五里霧中の状態でした。この先が見えない状況のことを新たな四字熟語で“国民年金”のこととされた時期もありましたが、今では“医療制度”“保険制度”“金融体制”“外交問題”となるのかもしれません。
五里霧中をもじった今回の新四字熟語の「後利夢中」は、利益を後回しにすることに夢中になる、一つのことに心を奪われて他のことを考えないことを指しています。この“後利”が使われた四字熟語があって、それは中国の古典の『四書』の一つの『孟子』に出てくる「先義後利」です。後利の読み方は“ごり”ではなくて“こうり”で、先義後利は道義を優先させて利益が後回しにすることを意味しています。
先義後利は経営者が好きな四字熟語で、流通や小売店の経営者の自伝や文章、インタビューでもよく出てくる言葉です。コロナ禍で流通の世界は、「利益は後回しでよいので世のためになることが大事」などと言っていられなくなり、過去に先義後利を唱えていた経営者が逆のことをしているというのも目にしています。
コロナ禍が収まってから後のことを考えていたのでは、健康面で大きなマイナスを与えた状況から脱却できなくなるので、少しでも落ち着いてきた段階で、コロナ後の利、つまり「後利」を考えて、一気に回復させるために「夢中」になって取り組める理屈やシステムを考えることが重要と認識しています。