四字熟語でコロナ後を考える14「却下証拠」

“信じるものは救われる”をもじった“信じる者は足元を掬われる”という言葉を以前に使って、足元に注意を払う重要性を述べたことがあります。足元という用語は他に足下、脚元、脚下とも書かれますが、お寺では玄関口に「脚下照顧」と書かれているのを目にした人もいるかと思います。これは「きゃっかしょうこ」と読んで、足下を見なさいという意味で、玄関口では履物を揃えるように伝えています。禅宗でよく使われていましたが、今では宗派を越えて目にするようになりました。
元々の意味ですが、「脚下」は自分の足下のことを指しています。何も足下を見て、気をつけろと言っているのではありません。足下に注意しないといけなかった北京五輪・パラリンピックの氷上競技、雪上競技のことではなくて、どのような足下の状態であっても揺らぐことがないように我が身、我が心を振り返って励め、自分の立場を見極めてから事に当たれということで、これを表したのが「脚下照顧」です。
この有難い言葉をもじった「却下証拠」は、自分にとって不利なことを「却下」するには、それなりの「証拠」を示してくれという意味で、コロナ禍で大変だからといって簡単に社員の馘首をしたり、取引先に迷惑をかけたりするようなことをしないで、相手が納得するだけの証拠を示してからにしてほしい、という弱者の声を代弁するために使っています。
コロナ禍で大きく低下した国民的な健康度を回復させるためには、これまでの常識に従うだけでなく、談合や忖度(そんたく)はやめにして、公平な立場で考え、実行すべきだという考えを示すときにも使うようにしています。平穏な時期には、これまでの常識が通じたかもしれませんが、これからの時代は常識と思っていたことが実は常識でなかったということを、まさに足下を見極めて感じ取ってほしいのです。