地域の課題を180度転換して強みに変える

岡山県の最北東端にある西粟倉村は、兵庫県と鳥取県と県境を接している人口1400人あまりの山村で、95%が山林となっています。「百年の森林に囲まれた快適で人が輝く自然と交流の村」をキャッチフレーズにしていますが、これは掛け声だけではありません。
西粟倉村といえば、木しかないと言われてきましたが、今では木を活かした他の地域ではできないことを打ち出したことから移住者も増え、起業する人も増えています。今や地方創生の見本とまで呼ばれるようになっています。
そもそも日本は国土面積のうち山林が60%を占めているため、山林を活かした活動は、各地の特性を把握して、それに合わせるようにすれば全国での活動につながっていくことができる大きな可能性を秘めていることになります。
合併で市や町が大きくなっていく時代に中にあって、自立する道を選択して、小さな地域で生き延びていくことを実践していることは里山こそ資産であるという考えから、“里山資本主義”と呼ばれています。
里山資本主義は、マネー資本主義の対義語とされ、お金が乏しくなっても水と食料と燃料が手に入り続ける仕組みを用意しておくための実践を指しています。生きていくための安心安全のネットワークが地域内で循環することを里山という言葉で示しています。
こういった話を聞くと、都会の生活を否定して、都会よりも田舎暮らしのほうがよいという選択のように思われるかもしれませんが、地方なら豊かな生活が待っているという、これまでの移住促進のような単純な話ではありません。それなのに広告代理店は、地域の特性を活かしたイベントの提案をして、まずは地域の魅力を知ってもらい、全国から観光客を集め、移住の促進につながるということを、いまだに提案してきます。
感染症が拡大している時代には、都市部からの人流とお金の移動を期待したイベントができない状況で、いつ別の感染症が現れるかわからない、その感染症が新型コロナウイルス のように何年も続くという状態では、これまでと同じ対策は通じなくなっています。そこを考えて、従来の発想を180度変えて、安心安全ネットワークづくりの新たな提案を求める段階になっていると考えています。