新型コロナウイルスの変異種はイギリス型、南アフリカ型、ブラジル型に次いでフィリピン型も登場して、日本国内でも感染者が確認されています。ウイルスの変異には2つのタイプがあって、感染力が弱くて重症化もしにくいというほうなら心配がいらないところでしょうが、それとは逆の感染力が強くて重症化しやすいという困った変異をしたものばかりです。
人間の身体の中には自然に身についた免疫システムがあり、少しの量のウイルスなら身体に入ってきても感染するところまではいかないというのが普通のことです。ところが、今回の変異株は、どれも初めに確認された新型コロナウイルスに比べると少ない量でも感染するという特徴があります。
このことが感染拡大防止にとっては大きな問題で、これまでの対策を続けていれば大丈夫、というわけにはいきません。例えば、これまでだったら1000個のウイルスが侵入してこないと感染しなかったという状態だったのが、600個でも感染してしまうのが感染力の強さという意味です。ということは、三密を回避して、マスク着用、消毒徹底を継続して、緊急事態宣言を延長していれば、収束に向かっていくという単純なものではないということです。
二重マスクについてスーパーコンピュータ富嶽でシミュレーションしたときに、マスク1枚をしっかりと装着した場合と、二重マスクで空間があいていた場合とでは、それほどの差がなかったことが明らかにされました。この場合の差というのは、飛沫量の差で、安全レベルの飛沫量としているのは従来の新型コロナウイルスについてであって、これが変異株であったときには、安全レベルといえるのか、それとも安全とみられていた量が実は危険レベルとなるのか、そこのところは変異株の研究が進まないことにはわからないというのが実際のところです。
わかったとしても、また新たな変異株が現れたら、また安全レベルが変わってしまうということで、いつになっても安全を宣言することができないのが新型コロナウイルスの変異株の困ったところなのです。