脂肪はエネルギー量が高く、1g当たり約9kcalと、糖質とたんぱく質の約4kcalに比べると2倍以上もエネルギー量が多いことから、多くの量を食べれば太るのは当然のことです。そこでエネルギーの摂りすぎにならないように脂肪の摂取量が一定量を超えないように指導されます。「日本人の食摂取基準」(2015)によると、1日の摂取エネルギー量のうち脂肪の割合は20〜30%とされています。これを超えないようにすればよいというわけですが、実際には脂肪の摂取量を一定にしていても、いつ摂るかによって太りやすさが違っています。
脂肪は朝食、昼食に摂るよりも夕食に摂るほうが体脂肪が増えることが知られています。その説明としては一般には「夕食後は活動でエネルギーを使う機会が少ない」ということが言われています。それは確かですが、では夕食後に昼間と同じだけの活動をさせた場合には、どんな結果になるのかを実証試験したことがあります。活動量が同じだけでなく、通常の運動量よりも増やした場合でも体脂肪が増える傾向があるという結果となりました。
その理由ですが、朝食、昼食と比べて夕食では、食後のエネルギーロスの量が異なっているからです。エネルギーロスというのは、飲食で摂取して体内に取り込まれたエネルギー量のうち、体内で使われなかったものを示すもので、エネルギーロス率10%というと、本来はエネルギーとして使われるべきものが10%も使われなかったということになります。エネルギーロスは何によって起こるのかというと、三大エネルギー源の糖質、脂質、たんぱく質が他にものに肝臓で合成されるときに使われるエネルギーとなっています。
血液中の三大エネルギー源で余分になったものは肝臓で脂肪に合成されます。これは同じ重量でエネルギー量が高い脂肪にしたほうが少ない容量で多くのエネルギーを蓄積することができるからです。つまり、糖質やたんぱく質を、そのまま蓄積するよりも脂肪に変化させると2倍以上のエネルギー量を溜め込むことができるということです。
食事で摂った脂肪を蓄積する形の脂肪酸に変えるのは、同じ脂肪への合成のために多くのエネルギーは必要としません。そのため、エネルギーロス率は約3%となっています。それに対して糖質とたんぱく質は脂肪とは違った形であるので、多くのエネルギーが必要となり、エネルギーロス率も20%ほどとなっています。そのため、脂肪が多く含まれる肉類を夕食に摂ると余分に使われるエネルギーが少なくなるために太りやすくなるわけです。
やせることを望んでいる人は昼間に肉類を食べて、夕食では脂肪が多く食品は減らすようにするべきです。逆に太りたい人は、夕方に脂肪が多い食品を摂るようにします。このエネルギーロスを活用すると、1日に食べる食品を変えずに、体脂肪の量をコントロールできるようになります。
脂肪合成はインスリンが多く分泌されたほうが進みやすく、インスリンは副交感神経の影響を強く受けるので副交感神経の働きが盛んになる夕方以降のほうが脂肪合成は進みやすくなります。夕食で脂肪が多く含まれる食品を食べると太りやすいのは、こういった理由もあるのです。