入浴のダイエット効果は、浮力と水圧によって血流が高まって筋肉に酸素と脂肪燃焼のために必要となる栄養成分のビタミンB群(ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂)や三大ヒトケミカル(α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10)が効果的に運ばれるようになることが一つにはあげられます。もう一つは温熱効果で、筋肉が温まることで筋肉の中にある脂肪分解酵素のリパーゼの働きが盛んになって脂肪の燃焼が進むようになるからです。
これらの効果は、どんな風呂でも同じなのかというと、深さがある浴槽では水圧が強くなるので深い風呂のほうが優位になります。浮力は、どこまでお湯の中に浸かっているかで変わってきます。首から上を湯面から出した状態では体重は10分の1ほどになります。浮力によって身体が軽くなった分だけ筋肉の負担が減り、血流もよくなっていきます。
温度が同じなら温熱効果も同じというように感じるかもしれませんが、お湯の量によって身体の温まり方が大きく違ってきます。
煮物をしたことがある方なら感覚的にわかるかと思いますが、煮物は小さな鍋で煮るよりも、大きな鍋で煮るほうが早く軟らかくなります。これは熱量の違いで、お湯が多ければ、それを温めるために使われた熱が多く、熱量も高くなっていて、その熱量が材料に伝えられて短時間で軟らかくなります。
それと同じことが入浴でも起こります。家庭用の浴槽よりも銭湯の浴槽のほうが身体は温まります。銭湯は衛生のために温度が高くされていますが、温度だけで身体が温まりやすく、冷めにくいわけではなかったのです。熱量の違いを実感できるのは温泉場の浴槽で、ぬるめのお湯なのに身体が温まりやすく、冷めにくくなっています。温泉の温熱効果というと、温泉成分のおかげという印象があります。もちろん、それもあるのですが、お湯が多く熱量が高いことが大きく影響しています。
熱めのお湯では脳が温まることになり、それがのぼせの原因になります。のぼせは“逆上せ”と書くように、脳の興奮状態が行きすぎたような感じになりますが、これは身体が温まることで脳に届けられる酸素が一時的に減ることが関係しています。大きな温泉のゆるめのお湯なら長く入っていても脳が急に温まりすぎるようなことはないので、のぼせに関しては安心して入浴することができます。
熱量が高いお湯に入っているとやせやすいわけですが、なかなか太りにくいことを悩んでいる人にとっては、脂肪が多く燃焼して減ることは問題となります。脂肪が燃焼されすぎないようにするには、熱量の影響も考えて、長湯をしすぎないこと、入浴後の食事では脂肪が含まれている食品を食べることなどにも気を使いたいものです。ただ、ぬるめの温度では熱量が高くても、自律神経の副交感神経の働きが盛んになり、そのために胃液とインスリンの分泌が盛んになることから、入浴後の食事ではインスリンの働きによって肝臓での脂肪合成が進みやすくなるので、心身のリラックス効果を感じる程度の時間は入浴するようにします。