太っている人が健康で長生きなのか

前回の「BMI22よりも24〜27が長生き」という話の続きです。標準体重よりも少し太っている人のほうが長生きだということは以前から言われてきました。この「少し」というのが、どれくらいなのかということですが、定説的には5%プラスと言われています。標準体重が60kgの人なら63kgということです。“標準体重”と聞くと、標準的な体重という印象があって、「この体重を目指せばいい」というようにも思われがちです。しかし、この認識は違っています。
標準体重というのは、1日に摂取してよい食事のエネルギー量を計算するときに使われる表現で、「身長(m)×身長(m)×22」で求められます。身長が170cmの人なら「1.7×1.7×22」で63.58kgとなります。単純に、この5%プラスなら66.759kgとなります。
この体重をBMIの計算式を使って計算すると「66.759÷1.7÷1.7」で23.1となります。
BMI22が日本人にとっては健康な体格指数だと言われて、それを目指すように指導をされてきましたが、少し体重が多いほうが健康と言われる時代にはBMI23を一つの目標にするのがよいということがわかります。それなのに朝の人気テレビ番組で紹介していた目標はBMI24〜27です。BMIが25を超えると肥満となるので、BMI24までなら、まだわからないでもありません。
BMI24〜27ということに条件をつけて、筋肉を増やして体重を増やすということなら、これもわからないではありません。しかし、番組では脂肪をもっと摂ることをすすめていました。
厚生労働省の『日本人の食事摂取基準』(2015年版)では脂質の摂取割合を20〜30%としています。その5年前に発表された2010年版では20〜25%となっていました。それが「5%も上がったのは脂肪を多く摂るように国が示した」と考える人もいますが、ただ脂肪を増やせと言っているわけではありません。
脂質の摂取割合を20〜30%としたことに加えて、飽和脂肪酸の摂取量を7%以下にすることも掲載されています。飽和脂肪酸は動脈硬化のリスクを高める脂肪酸で、畜産肉に多く含まれています。これに対する不飽和脂肪酸は逆に動脈硬化のリスクを低くする脂肪酸で、魚や植物油に多く含まれています。簡単に分類すると、飽和脂肪酸は血液をドロドロにする脂肪、不飽和脂肪酸は血液をサラサラにする脂肪ということです。
このようにドロドロ系の脂肪酸が7%としても、サラサラ系の脂肪酸を13〜23%にするということで、肉に含まれる脂肪を増やしてよいということではありません。しかし、昨今では「高齢者は肉を食べろ」と言われるように動物性のたんぱく質を多めに摂ることが健康づくりに必要という考えが広まってきました。肉を食べれば飽和脂肪酸を多く摂ることになるのは当然のことで、このバランスを考えながら、どれくらい肉を食べればよいのかを決めなければならないことになります。
ところが、肉を食べろ、BMI24〜27がよいということだけが一人歩きすると、脂肪で太る人が増える、わざわざ太ろうとする人が出てくるということにもなります。
ここで取り上げたように、もっと大きな視点から見て紹介しないと、健康のための情報が、不健康な人を増やす結果ともなりかねないのです。