体熱は細胞の中でエネルギー代謝によって作り出されていますが、全身の細胞の中で最も多くのエネルギーを作り出しているのは筋肉の細胞です。筋肉は基礎代謝のうち35~38%ものエネルギーを作り出しています。これは日本人の平均的な消費エネルギー量の割合で、筋肉が多い人ほどエネルギーが多く作られ、体温も高まることになります。筋肉量は男性のほうが多く、1日の摂取エネルギー量は平均すると男性は女性に比べて25%ほども多くなっています。それだけ身体が温まりやすいということですが、エネルギーが多く作り出されるということは活性酸素も多く作られるというデメリットもあります。
女性は筋肉が少ない分だけ、筋肉を動かして、消費エネルギー量を増やすという方法もあります。しかし、筋肉量の違いを補うだけの運動をしても、やはり女性のほうが体温は高まりにくくなっています。このようなことが起こるのは、女性の身体には脂肪が多く蓄積されているからです。脂肪細胞というと、余分なエネルギーを蓄積しておく貯蔵庫という印象がありますが、脂肪細胞の中には血液が送りこまれ、脂肪細胞の中ではホルモンや生理活性物質が作られています。これらの成分が脂肪細胞から出ていく先は血管で、この血管を通じて脂肪も出入りしています。
女性は男性に比べて10%以上も脂肪細胞が多くなっています。そのために、脂肪細胞に送られる血液も多くなり、その分だけ身体を温めるために使われる血液が減ることになります。これは女性に限ったことではなくて、男性でメタボリックシンドロームと診断されるほど内臓脂肪が多く蓄積されている人は、脂肪細胞に血液が使われて、やはり全身を巡る血液が減ることになります。
体脂肪が多いと、「脂肪が厚いので冷えにくい」ということが言われます。分厚い着物を着ていれば温かいことから、脂肪が厚いと温かくなるという印象かもしれないのですが、身体の仕組みは、そう簡単なものではありません。体脂肪が多いと、体内で発生した熱のうち放射される量が減るために、発熱量が少なくても冷えないようになります。最近、太った人は発熱を減らすような体質にはなっていないものの、以前から太っていた人は発熱が少なく、それが体質となっているので冷えやすくなる傾向があるのです。