妊娠中に摂るべき栄養は何か

妊娠中は胎児に母親から栄養が送られるので、充分な栄養補給をする必要があります。その話をすると、「だから太ったほうがよいと思って、たくさん食べている」と返答する人がいます。「充分な栄養補給=太る」ということではありません。太るのはいけないということで言っているわけではなくて、妊婦は太ること、つまり脂肪を蓄えることは大切なことです。
母乳の材料が血液です。血液中に多く脂肪が含まれていると、母乳に脂肪が多くなり、これが誕生後の赤ちゃんの重要なエネルギー源になります。血液中の脂肪は体脂肪の中に蓄えられています。この脂肪を分解して赤ちゃんに与える栄養にするわけですが、授乳中に母乳を通じて与えられるエネルギー量は1日当たり500〜800kcalとなっています。だから、少しくらい太っていても授乳によって元の体脂肪に戻っていきます。ただ、授乳によって体脂肪が使われる期間は6か月ほどなので、あまり安心して食べすぎて、太りすぎると、元には戻らないということにもなります。
母乳ではなく、粉ミルクで育てている場合には、母乳による脂肪減少はないことになります。母乳で育てなくても、初乳だけは与えるといことがあります。これは初乳には母親から伝えるべき重要な情報ともいえる成分が含まれています。その一つにラクトフェリンがあります。これは免疫成分の一つです。ラクトフェリンをプラスした粉ミルクも販売されています。
母親から赤ちゃんに伝えられるのは免疫力、抵抗力と同時に体質もあげられます。体質に関わるのは遺伝子や酵素で、これを作るために必要なのはアミノ酸です。20種類のアミノ酸が人間に必要なたんぱく質を作っていて、たんぱく質が含まれる食品を食べると分解されて、身体に必要なアミノ酸が補われます。ということで、妊娠中には赤ちゃんにしっかりと遺伝子を伝えるために、そして授乳中は赤ちゃんのためと同時に、母乳を与える母親の健康のためにも良質なたんぱく質を摂るようにします。良質なたんぱく質というのは、体内で合成されないために食品から摂らなければならない必須アミノ酸のバランスが取れているものを指しています。これに該当するのは肉、魚、卵、大豆・大豆製品(納豆、豆腐など)です。
良質なたんぱく質を摂って、脂肪は増やしすぎないようにしたほうがよいとはいっても、肉や魚には脂肪が含まれています。卵の黄身にも脂肪は含まれています。動物性の飽和脂肪酸は動脈硬化のリスクを高め、植物性や魚の不飽和脂肪酸はリスクを低くすると言われていますが、身体によい脂肪酸であっても、多く摂れば不要な栄養源となって、体脂肪として蓄積されていきます。また、糖質は多く摂ると肝臓で脂肪合成されるので、これも体脂肪を増やすことになります。
妊娠中も授乳中も、できれば妊活中も良質なたんぱく質を摂ることが必要です。良質なたんぱく質は家族の健康にも当然必要です。
ラクトフェリンについては、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。