子どもの脳の発達に糖質制限は影響するのか

発達障害が知られるようになってきてから随分と経過して、それも子どもの10人に1人の確率で発達障害児がいることがわかってからというもの、書店でも“発達障害”のコーナーが設けられるほどになりました。それだけ書籍が売れる環境ということなのでしょうが、コーナーが広がれば広がるほど、「こんな内容の本が置かれていてよいのか」と考えさせられるものも並んでいます。それは糖質制限の書籍が次々に登場したときに感じたことと同じ感覚です。
発達障害は脳の病気ではなく、脳の機能の発達がズレているだけという認識をしていますが、それなのに病気扱いして、生活習慣病を改善している糖質制限によって発達障害が改善するという医師の著書を見たときには驚きました。脳の栄養については糖質制限をきっかけに多くの専門家のアドバイスを受けながら勉強をして、脳の唯一の栄養源であるブドウ糖の摂取量は脳機能を維持するために絶対に必要な量を知りました。
発育中の子どもの場合には、1日の摂取エネルギー量は5歳までは500〜550kcal、8歳までは600〜650kcalとされていて、そのうちの50〜65%は糖質で摂ることがすすめられています。これは厚生労働省の日本人の食事摂取基準の2015年版のデータですが、2020年版でも同じ数字になる予定です。
脳の近くを通っている血管から脳細胞に栄養素が通過するところには血管脳関門という毛細血管があり、ここを通過できる成分が決まっています。必要のないもの、有害なものを通過させないための仕組みですが、脳細胞は他の細胞と違って、三大エネルギー源のうちブドウ糖しか通れないようになっています。だから、ブドウ糖は脳細胞の唯一のエネルギー源となっているのです。
脳細胞でブドウ糖を使って作り出されたエネルギー物質は、その細胞の中でしか使われません。電気のように他に伝わって使われるということはないので、一つひとつの脳細胞にブドウ糖が届かなければ脳全体が充分に機能することはないのです。ましてや、脳の機能に負担がかかっている発達障害児には多くのエネルギーが必要になります。このことを知れば、厳しい糖質制限で発達障害が改善されるのかどうか、想像がつくはずです。