子供が脂肪をおいしいと感じる理由

味の基本は“五味”とされ、甘味、酸味、辛味、鹹味(塩からい)、苦味の5種類の味覚を組み合わせて、おいしさを感じていると説明されています。日本人には旨味という出汁(だし)から来ている特有の味覚があって、これを加えて“六味”とする場合もあります。さらに渋味も加えて“七味”とする場合もあります。七味というと七味唐辛子のイメージがあって、別の表現がないか検討されていますが、さらに一味を加えて“八味”としようという動きがあります。8番目の味として加えられるのは脂肪をおいしく感じる味覚で、これは“脂味”と呼ばれます。
脂肪は重要なエネルギー源であるので、おいしく感じることで多くのエネルギー源を確保するために、おいしく感じるようになったと考えられています。脂肪のエネルギー量は1g当たり約9kcalで、糖質とたんぱく質の約4kcalの2倍以上となっています。
脂味だけでなく、苦味や渋味をおいしいと感じるようになるのは大人になってから、大人の味覚と言われ、少なくとも子供のときにはわからない味とされてきました。ところが、脂味だけは子供でもわかるようになってきています。マグロのトロをおいしく感じるのは脂肪のおいしさがわかる大人になってからのはずだったのに、今では子供までが「脂が乗っていておいしい」と平気で口にするようになっています。
その理由としてあげられているのは子供のときからの脂肪の摂りすぎです。肉に含まれる脂肪を多く摂っているうちに、脂味への感覚が早熟になっていくということです。脂肪の摂取量は今から70年ほど前の終戦直後と比べると6倍にもなっているといいます。それがわかっていて、子供のときには脂肪を多く摂らせないようにしている親も増えています。それなのに脂味をおいしく感じる年齢が下がってきています。
その理由として子供が好きなお菓子をあげる人が増えています。洋菓子には脂肪が多く使われています。もう一つ注目されているのはアイスクリームの一種のラクトアイスです。アイスクリームの一種という表現は実は正しくはなくて、正式にはアイスクリーム類というべきで、アイスクリーム類はアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスに分類されています。
アイスムリームは乳固形分が10%以上、乳脂肪分が3%以上のもので、牛乳よりも多くの乳成分となっています。アイスミルクは乳固形分が15%以上、乳脂肪分が8%以上のもので、牛乳と同じ程度の乳成分となっています。これではアイスクリームの味覚に近づけられないということで植物油脂が加えられているものもあります。ラクトアイスは乳固形分が3%以上で、乳脂肪分については規定がなく、植物油脂が多く使われます。ちなみに乳固形分が少ないものは氷菓となり、アイスキャンディーやシャーベットと同じ分類となっています。
植物油脂を加えているのに牛乳を使っているように見えるのは、乳化剤や安定剤などの食品添加物が使われているからです。植物油脂は価格が安いパーム油が使われることがあり、パームヤシから採れるパーム油は植物油脂であるのに、動物性食品に多い飽和脂肪酸が含まれていることから動脈硬化のリスクを心配する声も出ています。
アイスクリームを食べたほうがよいという話がされますが、アイスクリームの中には牛乳ではなく安い脱脂粉乳が原材料となっているものもあるので、アイスクリームであれば同じだということではないわけです。