学習障害の書字障害のために、うまく字が書けない子どもに上手に書くこと、丁寧に書くことを強要するのはプレッシャーを強めて、書くことそのものを嫌いにさせる、書くことから逃れようとさせることにもなりかねません。そのことを感じて、考えてほしくて、筆者(日本メディカルダイエット支援機構理事長の小林正人)が体験してきたことを書かせてもらうことにしました。筆者は幼いときから悪筆だと言われて育ちました。あまり達筆とはいえず味のある字を書く両親からではなくて、小学校に入る前に預けられていた母の実家の寺の祖母や叔母をはじめとした親戚から言われ続けました。
寺の関係者は文字を書くのも仕事のうちで、書道教室をするくらいに上手でした。そういえば父の姉も兄も書道の先生をしていました。なぜか両親だけが違っていたのですが、それを受け継いだのか、ちゃんと文字を認識することはできるのに、思ったように筆(鉛筆)が動かないという状態でした。
それなのに成人になったときにはジャーナリストを目指して、当時はペン書きしなければならない時代だったので、書くこと以外の仕事を選んでいました。ところが、大手出版社のゴーストライターをすることになり、その会社だけでも150冊を書きました。1冊は400字詰め原稿用紙で300枚は必要なので、よくも4万5000枚も書いてきたものです。
書きてきたとはいうものの、初めの1冊目の原稿こそ手書きをしたものの、内容に比べて読みづらいと言われました。どうせ印刷されて出版されれば原稿の字は関係なくなるとはいえ、原稿の文字をワープロ打ちする方の迷惑になるということから、なんと当時は70万円以上もした初期型のワープロを出版社から貸してもらえました。
そのおかげで150冊の原稿を書くことができて、自分でワープロを買えるようになって他の出版社でも34冊を書くことができました。その後に健康関連の団体の広報誌の仕事ができたのもワープロ、その後にパソコンで原稿が作れるようになったおかげです。
この方法で悪筆でも書く仕事ができるようになったものの、それで字が上手になることもなく、親から言われた「大人になれば字が上手になる」ということもありませんでした。
今は機器を活用すれば、いろいろと学習面で困難さがあっても克服できる時代になっているだけに、子どもたちの苦労を理解してあげて、機器の使用を当たり前のように認められる社会になってほしいと心の底から願っています。