文部科学省の「初めての通級による指導を担当する教師のためのガイド」には発達障害に関する部分があり、学習障害の理解と障害の状態の把握について紹介します。
(1)学習障害の概要
学習障害(LD:Learning Disabilities)とは、基本的には、全般的な知的発達に遅れはないものの、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示すさまざまな状態を指すものです。学習障害は、その原因として中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定されますが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接的な原因となるものではありません。
(2)学習障害により困難を示す領域
学習障害により困難を示す領域は以下のとおりで、学習障害は、このうちの一つまたは複数について著しい困難を示す状態を指します。
聞く能力:他人の話を正しく聞き取って、理解すること。
話す能力:伝えたいことを相手に伝わるように的確に話すこと。
読む能力:文章を正確に読み、理解すること。
書く能力:文字を正確に書くこと。道筋立てて文章を作成すること。
計算する能力:暗算や筆算をすること。数の概念を理解すること。
推論する能力:事実を基に結果を予測したり、結果から原因を推し量ったりすること。
(3)学習障害の特性
①見逃されやすい障害であること
学習障害は、障害そのものの社会的な認知が充分でなく、また一部の能力の習得と使用のみに困難を示すものであるため、「単に学習が遅れている」あるいは「本人の努力不足によるもの」とみなされてしまい、障害の存在が見逃されやすくなっています。まずは、障害の特性に応じた指導や支援が必要であることを保護者や学校教育関係者が認識する必要があります。特に、早期からの適切な対応が効果的である場合が多いことから、低学年の段階で学級担当がその特性を充分に理解し、適切な指導や必要な支援の意義を認識することが重要です。
②他の障害との重複がある場合が多いこと
学習障害は、中枢神経系に何らかの機能不全があると推定されており、注意欠如・多動性障害や自閉症を併せ有する場合があり、その程度や重複の状態はさまざまであるので、個々の子どもに応じた対応が必要です。
③他の事項への波及
対人関係形成の際にさまざまな困難が生じる場合があり、その結果として不登校や心身症などの二次的な障害を起こす場合があります。