学習障害の書字障害は、書けないという前に読めない識字障害が影響していることがあります。まずは識字障害の有無と程度についての確認が必要です。書字障害の改善というと、文字を書き写すことから始めるのが一般的ですが、その前に書くための道具、つまり筆記用具の鉛筆などとの相性を確かめておく必要があります。脳が命じたとおりに指が動かないために書きにくいということもありますが、鉛筆が指先で握りにくいように感じていると、思ったとおりに動かしにくくなります。
同じ六角の鉛筆であっても、メーカーによって指先の感覚が伝わりにくいものがあります。まずは複数のものを試して指が動かしやすいものを見つけることです。
指と相性がよい鉛筆であっても、握り方がよくないと上下左右に動かすのが困難になります。3本の指でつまむように握って、指先が自由に動かせればよいのですが、つかむような握り方だと手首の動きの範囲に左右されるために、思ったようにペン先が動かせなくなります。文字はヨコ、タテの動きのほかに、ナナメの動き、円の動きがあり、これに該当する文字を書くときには、どの方向にも動かせるようにトレーニングしておく必要があります。そのために鉛筆を持ったときには、ヨコ、タテ、ナナメ、円の動きで書いてみます。この中でペン先が動かしにくいところがあったら、例えば三角形、四角形、丸といったように描きにくいものを繰り返して描いてみます。最初のうちは図形を描くための定規を使うことから始めてもよいでしょう。
文字は全体を覚えていても、それを鉛筆の動きで全部を書くのが難しいことがあります。画数が多い感じになるほど困難さを感じるようになるので、漢字を編や作りなどに分解して、それぞれのパーツが書けるようになったら、組み合わせて目的とする漢字が書けるようにしていくという方法があります。こういった手順をたどることによって、苦手意識を薄めていくことも大切です。