バナナに残留している農薬について前(学習障害112)に説明しましたが、特に残留の心配が大きいのは、日本まで赤道を通過して運ばれてくる国で栽培されたものです。高温多湿の地域を通過する船の中ではカビが生えやすく、それだけ多くの防カビ剤が使われる可能性が高くなります。その防カビ剤は農薬を原材料としたもので、MBC(カルベンダジム)という農薬を主成分としたベノミルやチオファネートメチルが使われています。これらの薬剤が入れられた水槽を通過させるか、スプレーで噴霧する形で殺菌処理がされています。
台湾やフィリピンからの輸送なら赤道を超えるわけではなく、台湾の場合には収穫から日本に届くまでの期間は5日ほどです。そのため、軸を腐敗させないためにミョウバン(硫酸アルミニウム−硫酸カリウム複合体)を使ってきたので、安心度が高いといえます。
食品に残留する化学成分は食品添加物に分類されますが、袋などに入ったものには残留している食品添加物の名称を表示することが義務づけられています。防カビ剤として使用されている農薬のイマザリルやTBZ(チアベンダゾール)が残留していれば、それを表示することになります。しかし、袋に入れずに店頭で販売されている場合には、表示を見て使用の有無を確認することはできません。
そこで業界で見極めのポイントとされているのは、軸の部分の緑色の状態です。TBZはバナナの軸が腐ったり、カビが生えて房のバナナがバラバラにならないようにするために以前から使われていました。以前は軸だけに使われていたわけですが、TBZを使うと皮も果実も熟して黒っぽくなっていくのに、軸だけは黄色にならずに緑色のままということが起こります。このことからTBZの使用は軸を見ればわかります。軸はバナナの身に栄養成分を運ぶ通路になっているので、そこには農薬や化学成分が入りやすく、残りやすいということを知っておいてほしいのです。