新型コロナウイルスの感染拡大から健康への影響が懸念されて、高齢者の健康寿命が短くなることが話題となりました。高齢者の健康は重要ではあるものの、そればかりではないことを広く伝えさせてもらっています。その対象としているのは子どもですが、その研究のきっかけとなったのは発達障害児のコロナ禍の反応です。
感染拡大で全国一斉に休校になったとき、直接学ぶ機会が奪われ、自宅での課題の自習やタブレットを使ってのオンライン教育が始まりました。これだけでも学力低下は起こりましたが、教科書に書かれていることを学ぶことだけが学習ではありません。教師とのやり取り、周囲の反応を見ながら進めていくことも大切です。家庭で学びたくても勉強する場所がない、親がテレワークで家庭にいるということもあって落ち着いて勉強できない、オンライン教育にしても、通信環境が整っていないと通常の進行では学べなくなります。そのために経済的なことが学業の差につながりました。
学校で学べるようになってからも、新型コロナウイルスの感染が怖いからと学校に行けない子どもは文部科学省の調査だけでも7000人はいるといいます。マスクをしているだけでも摩擦や中にこもる臭いなどが気になって集中できないという子どもも少なくありません。
オリンピックは強行開催ということになっても運動会はない、運動系のクラブ活動もない、体育も通常のことはできないという地域も依然としてあります。また、地域で集まることも感染リスクがあるということで学ぶことも遊ぶこともできないという地域もあります。運動不足に、家庭にいる時間が長いことからの食べすぎ、自宅から出られないことのストレスなどなど、心身ともに大きな負荷がかかった状態で育っていくということです。
このまま継続すると、学習面でも情緒の面でも体力面でも、その前の世代とは違う「コロナ世代」とも呼ばれかねません。発達障害児は、さまざまな困難を抱えたまま学習をしていますが、それと同じような状態に多くの子どもたちが巻き込まれていて、発達障害児と同じことが起こりかねない、発達障害児と同じ対応をしないといけないという状況にもなっています。
発達障害がある子どもにとっては学習の困難さが重なってくることになり、コロナから脱出できたときには、以前とは比べものにならないくらいの対策をしていかなければならないと覚悟をしています。