使っているのはペンなのに“筆使い”と言われると、それだけで混乱をしてしまう子どもがいます。筆使いは文字や絵を書くときの筆記用具の使い方のことで、筆ではないので“ペンづかい”と言っても間違いではありません。ところが、“使い”ではなくて“遣い”と書いて“筆遣い”となると書道や絵を描く技能のこととなり、この場合はペンを使っていたとしても“筆遣い”と書かなければならなくなります。
文字を書くときの“筆使い”の技術は学習障害の改善には必要なことで、まっすぐに線を引けないときには定規を使って書くことも役に立ちます。ただし、定規に完全に頼って、ただペン先を動かすだけにならないように、定規を使うものの自分の意思と指先の力を使って書くということには気を配るようにします。
文字を書くということは、ヨコ、タテ、ナナメの線のほかに、円を描く指先の動かし方も必要になります。その場合も、ただ円を描くだけでなく、上下左右に動かすときに力を入れるポイントの切り替えも大切になります。これも切り替えるだけでなく、徐々に力を加える、徐々に力を弱める、それも円運動をしながらコントロールするというのは、それなりの訓練をしていたかどうかで、結果が違ってきます。
その訓練として活用しているのはスピログラフです。これはクルクル定規とも呼ばれる曲線による幾何学模様を描くための定規で、プラスチック製の板に歯車状の穴があけられていて、穴の内側に小さな歯車をつけて、この小さな歯車のピンホールにペン先を入れて、小さな歯車を回すように動かしていきます。この動きによって、ペン先の軌道が転がし曲線を描いていきます。まるで万華鏡のような幾何学模様を描くことができることから、子どもたちは集中して取り組むことができるようになるので、楽しみながら続けるというトレーニングにもなります。
安いものでは百均で販売されている小型のものから、3000円を超えるものまであります。高額なほど複数の定規と歯車があって、より多くの、より複雑な幾何学模様と描くことができるので、飽きずに続けられることになります。