腸内細菌の善玉菌を増やす方法は、大きく二つの方法が考えられています。一つは、善玉菌と同じ働きをする菌を摂ることで、これはプロバイオティクスと呼ばれています。腸の機能を高める食べ物としては、ヨーグルトや発酵食品に含まれている乳酸菌が代表としてあげられます。乳酸菌は糖を分解して乳酸を作り出す菌ですが、腸内には乳酸菌は多くは棲みついていません。腸内に棲みつき、増殖をするためには酢酸も必要であり、乳酸と酢酸を作り出す働きがあるのは腸内細菌のうち最も多いビフィズス菌となっています。
ビフィズス菌は32種類があり、そのうち腸内では10種類が確認されています。中でも多いのはビフィダム菌、ロンガム菌、アドレッセンティス菌、ブレーベ菌、インファンティス菌の5種類です。これらのビフィズス菌は、ヨーグルトなどの乳製品に使われています。
ビフィズス菌が含まれたヨーグルトなどを食べて、これが腸内に定着して善玉菌となってくれればよいわけですが、腸内には残念ながら1〜2日しか棲息することができません。もともと腸内で棲息しているビフィズス菌と食品のビフィズス菌は同じようなものであっても、増殖するための環境が異なると、異なった性質を持つようになります。
しかし、腸内に一時的にビフィズス菌が増えたことで、腸内での発酵が進み、腸内は酸性傾向になっていきます。その結果、酸性傾向の環境の中で増殖しやすい善玉菌が増えていくようになります。つまり、腸内環境を酸性傾向にして、善玉菌を増やすためには、少量でもよいので、継続してプロバイオティクスとしてのビフィズス菌を摂るようにすべきだということです。
腸内環境を整えるための、もう一つの方法として注目されているのはプレバイオティクスです。これはプロバイオティクスが働きやすい環境に整える役目をするもので、糖質や乳製品などの善玉菌の栄養源(エサ)や食物繊維などが、それに当たります。ビフィズス菌を増やすものとして知られているのはオリゴ糖で、単糖(ブドウ糖や果糖)が2〜10個つながった構造となっています。
こういったプレバイオティクスを摂ることによって、善玉菌の増殖が促進された結果として整腸作用、ミネラル吸収促進作用、炎症性腸疾患の予防・改善作用など有益な効果が認められています。
食物繊維は、人間の身体の中の酵素では消化されない食物成分のことで、消化されないために吸収もされず、ほとんど形を変えずに大腸まで届き、腸壁を刺激しながら排泄されるわけです。しかし、腸内細菌によって分解されると善玉菌の栄養源として使われることから、これもプレバイオティクスとなります。
プロバイオティクスとなる乳酸菌などを摂るのと、プレバイオティクスを摂るのと、どちらが効果的かという議論もありますが、より腸内環境を整えるためには、両方を一緒に摂るほうが有効だということは当然に考えられます。この両方の作用によって腸内環境を整えることはシンバイオティクスと呼ばれます。