発達障害の学習障害は、目先の状態が注目されがちです。数字が正しく書けない、鉛筆(シャープペンシル)で線がまっすぐに引けない、文字(ひらがな、カタカナ、漢字)が見たとおりに書けないといったことで、それを改善しようと目先の指導をしがちです。もちろん、それは大切なことではあるのですが、それだけではないというのが学習障害の改善に取り組むときの姿勢となっています。
子どもの成長を学習面から見ていくと、身体機能と認知機能がベースとなり、その上に学業技能があり、その裏付けがあって初めて学力を身につけることができるという流れになっています。学習技能は手の動き、指の動きを正確に行うための機能で、脳が文字を正しく認識できたとしても、それを書き写すときに思ったように指先が動かないのでは、鉛筆を正しく持つこともできなければ、正しく動かすこともできなくなります。
その機能を身につけるためには、姿勢が整えられていることが必要です。“学習に取り組む姿勢”というと、一般には“やる気”のことを指していて、いわゆる“やる気スイッチ”を、いかに入れるかということを考えます。これも重要ではあるのですが、もう一つの姿勢も重要です。椅子に正しく座って、机に正しく向かい、姿勢も正して、腕から指先までのポジションを整えます。これが基本であるのですが、実際に机に向かっている子どもを観察すると、初めの正しく座ることができないということが目につきます。
このことを口で言ってできるなら精神論になりますが、そうではなくて、まっすぐに座ることができない、座れても長く姿勢が保てない、じっとしていることが苦痛に感じる、そもそも椅子の座面がお尻とフィットしていないと感じて腰が動いてしまうということが、発達障害では起こりやすくなっています。まっすぐに座るためには筋肉の強さも必要ですが、それに加えて、姿勢を保つための身体のバランス感覚も必要です。
私たちは、姿勢を保って座っているようでも、実際には細かく身体は揺れていて、それを微妙に調整して学習に必要な手の位置、目の位置を、できるだけ同じ位置にしようとしています。その調整能力が発達の状態によって整っていないと、同じ姿勢を保つことができず、また身体が揺れている感覚が続いて、学習に集中できないということにもなります。