文字を正しく書くときには、正しい姿勢が大切であることが、よく言われます。書道の世界では美しい文字は美しい姿勢から、ということが言われ続けています。書道の筆使いは、ただ筆で墨を紙につけていく行為ではなく、筆の持ち方、紙への接し方、動かし方、勢い、とめ、はね、はらいといった一連の動きは指先、小手先の技術ではなく、正しい姿勢があってこそ生まれると教えられています。
そのためには体幹の維持が大切で、上体は垂直にするのではなくて少し前傾姿勢にして、上半身が硬直しないようにします。ただ前傾姿勢といってもわかりにくいので、15度くらいの傾きが示されることもあります。書道は、もともと正座をして書くものだったこともあって、椅子に座るときの姿勢も机と腹部の間に拳一つ分の隙間をあけます。左右に傾きがない姿勢で、正面から筆を動かす紙に向かうことが求められます。書道では、上体を硬直させることなく、踊るように左右に動かして書く技法もありますが、それは基本が身についてからのことです。
書道に限らず、身体を使って表現するときには、身体の機能を合理的に働かせることが大切であり、その合理的な働きの基本となるのが正しい姿勢であるという考えです。
鉛筆(シャープペンシル)で書く場合には、正しい姿勢とされるのは、顔を机から離して、腕を前に出しすぎないように座ることから始まります。椅子の座り方の基本となるのは両足の裏を床につけることで、足を前に伸ばしたり後ろに引いたり、交差させたりすると腰が安定しなくなります。上半身の骨は骨盤の上に一直線に乗っているので、骨盤の安定が身体を揺らさず、頭の位置を保つための基本となります。骨盤が傾いていると背骨が曲がってバランスを取り、肩のラインが傾き、頭の位置は逆に傾きます。
手を置く位置も重要で、両手の親指と人差し指で三角形を作り、机の上に自然に下ろします。その位置から利き手を起こしたのが鉛筆を持つポジションとなります。反対側の手は、そのまま机に置いておくことが利き手の位置を安定させるための簡単な方法となります。
文字を書くことに集中すると頭の位置が前に傾いていって、机との距離が短くなってしまいます。目と紙の位置は30〜40cmほど離すことで、書く姿勢が保たれます。
鉛筆と紙は正面に置くことが基本とされてきましたが、ペン先が正面にあると手によってペン先が見えにくくなります。書いていく紙は正面から少し利き手の反対側(右利きなら左側)に移動させて、ペン先が見えるようにするのが正しく文字を書くための当たり前の工夫となりますが、そのことが案外とできていない子どもを多くみかけます。