左利きの割合は世界的には10%とされていますが、日本では11%と少しだけ多くなっています。左利きであっても文字は右手で書くという指導が、かつては行われてきたことから、今から50年ほど前は左利きの割合は6.5%となっていました。この差は、強制されて、もしくは矯正されて文字が書きにくい状態で書き続けてきた人ということで、脳の機能と使う手の動きが合わないまま苦労をしてきた結果、それが学習の状況にも少なからず影響を与えてきました。
利き手に関係するのは脳の右脳と左脳のバランスで、右利きは左脳が優位に働き、左利きの人は右脳が優位に働いていると言われます。右脳の働きは男性ホルモンのテストステロンによって影響を受けることが知られています。また、男性ホルモンのアンドロゲンが左脳の発達を遅れさせるという研究もあり、男性のほうが左利きが現れやすくなっています。これを右利きに矯正しようと強制することは男性のほうが脳の負担が大きくなることを示しています。
左脳は言語や論理的に考えるときに働く思考・論理の脳で、右脳はイメージや感覚的な働きをする知覚・感性の脳であると一般に分類されています。右脳は芸術家や天才の脳だとも説明されることから、左利きの人は優れた才能が秘められていると期待されて、これを引き出す教育が求められています。これは発達障害児にギフテッドを期待するのと同じ、知性、創造性、芸術、特定の学術分野の潜在的な能力があるので、学校の生活に適合しにくいことから、せっかくの能力が引き出せていないとの考えがあります。
子どもの能力を引き出すためには、無理をさせずに学習に取り組むことができる環境を整える必要がありますが、左利きの子どもに右利き用のハサミを使って紙切りをさせることを続けていたら、なかなか上手に使えない、結果が出せないということにもなります。鉛筆に右利き用、左利き用の区別はないので、どちらの手でも書くことはできます。しかし、文字の形は右利き用になっています。それを左手で書くことは、脳に負担が強くかかることになります。それが学習に時間がかかり、解答の制限時間に間に合わないことにもなります。
それを意識して、左利きの子どもの学業技能(学習のために必要な技能)を高めるのと同じように、学習障害の子どもの学業技能についても考えるようにしてほしいのです。