音楽を聴きながら学習することは、マスキング効果による集中力の向上、脳内神経伝達物質のドーパミンによるモチベーションの向上、同じく脳内神経伝達物質のセロトニンによる精神安定、脳の海馬を刺激することによる記憶力の向上といった効果が認められています。しかし、音楽の種類によっては、かえって学習の妨げになることもあるので、選曲には注意する必要があります。
まず避けなければならないのは歌詞がある曲です。歌詞があると、それが周囲の音と一緒に耳から脳に入り、雑音や話し声などと同じように集中できない原因を増やすことにもなります。同じ歌詞がある曲でも、日本語の歌詞は言語を司る左大脳半球にある言語中枢を刺激することになります。中でも聴き慣れている曲の場合には、気を取られやすく、その曲を聴いた前の状況が思い起こされます。そのために、今の目の前のことに集中しにくくなります。
学習するときには、リラックスできるクラシック音楽がすすめられることが多く、確かにクラシック音楽の多くは演奏だけで、歌詞がないものがほとんどです。リラックスしやすいのは確かですが、楽曲によっては急に音量が高まったり、刺激的な音が流れることもあり、一時的であっても脳が不要に刺激されることにもなります。クラシック音楽を使うときには、あらかじめ全曲を聴いて、安心して使えることを確認しておきます。
洋楽の場合には、歌詞がない曲、歌詞があっても外国語の曲、初めて聴く曲を準備することがすすめられます。
音楽を聴きながらの学習で最も注意しなければならないのは、常に音楽を流しておいて、音楽のある環境が当たり前になることを避けることです。音楽が流れているときには集中できるけれど、音楽がないと集中できなくなる、ということもあります。試験会場では、音楽は流されていません。自分だけがイヤホンを使って、音楽を聴きながら試験をすることは許されていません。許可されるとしたら、周囲の音を遮断するための耳栓くらいで、発達障害の感覚過敏のうち聴覚過敏がある子どもに許可されることがあるだけです。