筆記具へのこだわりは誰にもあることですが、発達障害児は特に強いこだわりがあり、この筆記具でなければならない、学習のときと試験のときでは別の筆記具でなければ納得しない、試験問題がうまく回答できないということもあります。発達障害の中でも、学習障害児で書字障害がある場合には、微妙な感覚の違いが文字に現れてくることから、筆記具へのこだわりには驚かされます。
ただ、デザインや書き心地ということではなくて、他の人からしたら、まったく同じとしか感じられない鉛筆であっても、芯の硬さと色が同じであっても、こちらでは書けるけれど、こちらでは思ったとおりの文字が書けないということもあります。六角形の鉛筆は、転がりにくく、3点(親指、人差し指、中指)で押さえるために、3の倍数の形になっています。三角形では持ちにくく、九角形では丸に近くなって持ちにくく、転がりやすくなります。
色鉛筆の断面が丸いのは、文字ではなく、絵を描くために開発されたもので、文字よりも複雑に動かすために、さまざまな持ち方をすることを想定して、形が決められています。
発達障害では感覚過敏の触覚過敏の子どもも多く、指先の微妙な感覚の違いが把握できずに、3点で押さえにくい場合も多々あります。そのために握る持ち方をする子どもも少なくありません。
六角形の鉛筆は比較してみても同じ形に見えます。表面の加工も同じようでも触覚過敏があると違いがあるように感じてしまいます。一番書きやすい鉛筆であっても、長さによって力のかかり方が違い、また芯の硬さによっても感覚が違ってきます。形と長さと芯の硬さによって書きやすさが違い、その感覚が文字を書くときの集中や正確さなどにも変化を与えるので、これはこだわりというよりも、その子どもにとっては別のもので書かされているような感覚であることを理解してほしいのです。