発達障害の一つの注意欠陥・多動性障害は、一般には落ち着きがなくて、集中ができない、場合によっては椅子に座り続けることができずに教室内を歩き回る、ときには外に出て行ってしまうということもあります。それが理解できずに、無理に座らせようとしたり、慌てて追いかけていっても、そんな注意をするだけで改善されるようなことではありません。
何も教師を困らせてやろう、他の子どもが集中して学べないようにしようとして他の子どもと違った行動をしているわけではありません。どんなに我慢して座り続けようとしても、それがイライラ感を高め、エネルギーが有り余って動かざるを得ないというのが注意欠陥・多動性障害の特性です。
この感情が抑えられないときに、もっと幼いときには周囲の子どもに当たったり、思わず手を出すという暴力的なことをしてしまうことがあります。これも本人は暴力だと意識しているわけではなくて、無意識の行動に近いのです。このような行動も、成長につれて変化をしてきて、自分に対しての行為となり、有り余ったエネルギーを他に発散させる方法がないと授業から離れるような行動を起こすようになります。
そんな行動に対して、放っておくということをする場合が多く、教室から出たら、そのまま家に帰ってしまうということは極めて例外的で、気が済めば戻ってくるのが普通の行動です。周りからしたら普通の行動ではないように思えて、まるで授業を妨害しているようにも感じてしまうかもしれません。いじめの場合には無視することはいけないことではあるものの、注意欠陥・多動性障害では、むしろ無視をしてくれて、戻ってきてからも、また席についてからも、何事も起こらなかったかのように接してくれるのが本人にとっては楽に学べる条件となっているのです。