「覚えたことは思い出せるが、覚えていないことは思い出しようがない」と言われます。当たり前といえば当たり前のことですが、一生懸命に覚えるために時間を使うだけでは記憶として残ってくれません。記憶されるには、以前に記憶したことと照らし合わせて、整理をして重要なことを記憶としてインプットすることが第一段階です。
これは一時的な記憶であって、本当に記憶として刻み込み、いつでも引き出せるようにするためには、次の第二段階が必要になります。その第二段階に当たるのは睡眠中です。“寝る子は育つ”という言葉がありますが、“寝る子の脳は育つ”ということです。
脳の記憶は机に例えることができます。記憶を紙に書いた文字のようなものだと考えると、一時的な記憶は机の天板の上に紙を置いただけの状態です。覚えたばかりのことを、すぐに引き出そうとする場合には、天板の上の紙を見ていけば必要な文字情報を見つけることができます。ところが、天板の上に次々と紙を積み重ねていったら、長く置いておいた紙を見つけることができなくなります。
そこで見つけ出しやすくするために、記憶した情報を引き出しの中に分類して入れて整理するようにします。分類してあれば、思い出して必要なものを取り出しやすくなります。その引き出した情報を天板の上に置いて、新たなに天板に乗せた情報と組み合わせて、書き換えて更新した情報を引き出しに入れて整理します。
この整理の時間は睡眠中で、眠りが浅くなったレム睡眠のときに情報の出し入れがされています。夢を見ているのはレム睡眠のときで、夢は過去の情報を引き出すことで夢のストーリーが組み立てられています。深い睡眠のノンレム睡眠のあとのレム睡眠で、脳における情報の出し入れが盛んに行われるので、熟睡することは記憶の能力を高めることになるのです。