喫煙には害があると言われても、子どもには関係がない話としてスルーされることもあります。直接的な喫煙はしていなくても、間接的に喫煙している状態になる受動喫煙も大きな影響があります。受動喫煙については、国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して研究を進めている中で、その研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」が公開されています。その発表の第一弾が「喫煙・受動喫煙」で、食事や運動などよりも重要事項として注意が呼びかけられています。
自分はタバコを吸っていなくても、他人の吸ったタバコの煙を吸い込む受動喫煙も問題で、非喫煙の女性で夫が喫煙者であるために受動喫煙をしていた場合には、肺腺がんのリスクが2倍、肺がんのリスクが1.3倍高くなるという報告もあります。これは大人の場合で、子どもの場合には、抵抗力が弱いために、もっと健康被害が高まります。
受動喫煙でも、程度の違いはあっても血管が収縮すると同時に、血液の粘度が高まることから血流が低下します。そのために毛細血管の先にある全身の末梢の細胞に新鮮な酸素と栄養素が充分に届けられなくなります。これを改善して血流を盛んにするために、ストレスホルモンが多く分泌されて、自律神経の交感神経の働きが盛んになり、血圧が上昇して脈拍も増えるようになります。
脳は全エネルギー量の20%が必要で、エネルギー産生には酸素が必要であるので、血流が低下すると脳に送られる酸素が減り、エネルギー産生も低下することになります。
受動喫煙の期間が長くなると、喫煙しているのと変わらないような状態も起こります。受動喫煙によって肺に多く吸い込まれた一酸化炭素は血液中に入ります。一酸化炭素は酸素を運ぶ役割をしている赤血球のヘモグロビンに優先的につくために、酸素を充分に運べなくなります。すると、酸素不足になって、これを解消するために脈拍が高まるのです。
この状態は自律神経の交感神経の働きを高めすぎることになるので、落ち着いて学習することができなくなり、これが学習の結果に悪影響を与えることになるのは明らかなことです。