クイズ形式の健康番組のディレクターから、番組の裏付け調査ということで、「宿便は腸の中に何キロありますか」との質問がありました。ゲスト予定のタレントが4kgの宿便を出してダイエットに成功したが、それ以上に溜まっている人はいるか、という主旨の質問でした。知り合いのディレクターなので断るのは申し訳なかったのですが、当方が話した結論は「宿便はありません」でした。
この話は内視鏡の専門家に取材したときに聞いたことでもあり、学会で発表もされていることです。宿便は一般には「腸壁にこびりついたヘドロ状の老廃物」と説明されていて、これが3〜4kgもあると伝えられているわけですが、腸壁は新陳代謝が盛んなところで3〜4日ほどで腸壁の細胞が剥がれて、新しい腸壁が作られています。つまり、腸壁に老廃物がこびりついていたとしても、腸壁とともに剥がれて排出されます。
宿便を取るためには断食がすすめられ、断食をしていると通常の便ではなく、黒いカスのようなモノが出てきます。これが宿便だと言われることもありますが、通常の便は食べたもののカスの他に、腸内細菌の死骸も含まれています。断食をして食べ物のカスがなくなると腸内細菌の死骸だけが出てきます。これが宿便とされるものの正体です。
ないものを出すための治療や療法の意味を問われても、これには答えようがありません。東方のアドバイスを受けても、結局は準備が進んでいるので、そのまま放送されるようなことになるのでしょうが、こういったことはよくあることです。