寝酒で熟睡できるか

寝る前に飲酒をすると、よく眠れると言われますが、「飲んだら何度も目覚めてしまう」という人がいます。どんなものを飲んでいるのかを聞いてみたらビールとのこと。寝酒はナイトキャップと呼ばれますが、強いお酒、つまりアルコール度数が高いウイスキーやリキュールなどを飲んで、眠気を誘うというのが本来の飲み方で、アルコールが含まれているものなら何でもよいというわけではありません。アルコール度数が低めのビールは量が飲めるので、寝る前の水分の摂りすぎで寝ている間にトイレに行きたくなって、目覚めることになります。
では、通常のナイトキャップなら寝覚めることはないのか、というと、飲酒をするとアルコールが代謝を高めるエネルギー源となるので、体温が上昇するとともに水が多く作られます。これは細胞の中でエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)を作り出すときに二酸化炭素と水が発生するからで、エネルギー量が高いほど体内で作られる水が多くなります。
若いときには、それくらいの水分では熟睡度が影響されることはないものの、年齢を重ねてくると水分の増加が寝ている間の尿につながっていきます。年齢を重ねると飲酒して寝たときには、寝ている間に目覚めることがあるのは飲酒によって睡眠度が浅くなっていることもあります。
飲酒するとアルコールの麻痺性もあって、眠りにつきやすくなります。しかし、眠りの度合いは低く、いわゆる眠りの質が悪い、浅い眠りとなります。睡眠は初めの深い眠りがあると、90分周期で繰り返される睡眠も深くなる傾向があります。この睡眠の波は徐々に小さくなりながら、最後のほうには小さな波になって、何か刺激を受けると睡眠の途中で目覚めることになります。
一般には睡眠周期は90分で、4回の周期で6時間睡眠となり、そのあとは浅い眠りになって7時間程度の睡眠時間となります。ところが、年齢を重ねると深い眠りは2回となり、それ以降は浅い眠りの波になるので、眠りについてから3時間ほどでトイレに起きるようなことになります。このように眠りが浅いのに、さらに寝酒で眠りが浅くなったのでは目覚めやすくなるのは当然のことです。
テレビ通販のコマーシャルで目にするノコギリヤシは、男性の前立腺の肥大に好影響を与えるので、効果的に排尿されることから寝ている途中で目覚めることがなく、「スッキリ」というのは理解できますが、寝酒をすると水分が多く作られているので、コマーシャルに登場する高齢者ではスッキリの度合いが変わってくる可能性があります。