左が男雛、右が女雛は正しいのか

エスカレータの左右の立ち位置については前回、「西が右側、東が左側」ではなくて、大阪を中心とした関西圏が右側に立ち、他の地域は左側に立つのが大原則であるということを紹介しました。東西での右と左ということでは、お雛様の左右の並びについて語られることが多く、それについても述べたいと思います。
雛壇の右、左というのは正面から向かって、ではなく、上座から見た方向を指しています。京都は地図の右側が左京で、左側が右京ですが、これは京都御所から見た方向となっています。左右は上位が決まっていて、左が上位に当たります。役職でいうと左大臣が上位(上座)で、右大臣が左大臣に対して下位(下座)となっています。
ということになると、雛飾りは男雛が上位なので左(正面から右側)、女雛は右(正面から左側)となっているはずですが、関東の大手の人形会社のお雛様は男雛が右(正面から左側)、女雛が左(正面から右側)になっています。伝統的なお雛様はどうなのかというと、京雛は男雛が左(正面から右側)、女雛が右(正面から左側)となっています。
この東西の、というよりも京都と京都以外の違いの理由として、昭和天皇の皇太子時代のご成婚のときに、皇太子殿下が右(正面から左側)、妃殿下が左(正面から右側)の位置したことから、それに合わせて入れ替わったと説明されています。一般の結婚式の並びも、これと同じになっています。
お雛様の主流の並びからいうと、女性が上位になっているというわけですが、今の時代を考えると女性が上席にいても不思議はないというか、当たり前にも感じるところです。
お雛様と書いてきましたが、内裏雛というのが正式ですが、男女を合わせて一対で内裏雛と呼んでいます。ところが、男雛が“お内裏様”、女雛が“お雛様”と呼ばれることが多くなっています。これは童謡の「うれしいひなまつり」が影響しています。これはサトウハチローの作詞で、「お内裏様ととおひな様、二人並んですまし顔」という歌詞がもとになっているようで、この歌詞を聴くと、そして歌っていると、男雛がお内裏様、女雛がお雛様という印象になりますが、どうしてこのような歌詞になったのかというと後日談としてサトウハチローが間違って書いたということが伝わっています。
これは間違いというよりも、感覚的な許容範囲といえるかもしれませんが、左右で気になるのは「すこし白酒めされたか赤いお顔の右大臣」の歌詞です。赤い顔をしているのは知識・知恵のある老人を表したもので、勢いのある若人は白い顔となっています。この歌詞のために左右を間違って雛壇に飾る人もいて、赤い顔の人形を雛壇の右側に飾っていた知人に、正しい並べ方だと話したところ、上座から見た左右のことを知らず、赤い顔をしたのが右大臣と思って並べたと聞いて、歌詞の威力を感じたことがあります。
赤い顔をしているのは上位である左大臣で、だから上座の右側となっています。これも作詞者が左右を間違えたという後日談があります。これこそは間違いであるので直してもらいたいところですが、ここまで広まっている歌詞を今さら変えられないのなら、この逸話を話して、子供のときから正しく伝えてほしいところです。