隠そうとしても見えてしまう微表情を読むことによって、考えていることを見抜くことは、あまりよい評価をされないことがあります。騙そうとしている人の嘘を見抜くことは仕方がないことと感じてもらえるものの、心の中を見抜かされてしまうことには抵抗感があるのは当然のことです。
できれば正々堂々と立ち向かってもらいたいと言われることもあるのですが、「正々堂々」の本来の意味がわかれば、批判の目で見られることはなくなるかもしれません。
一般に知られているのは、「態度や手段が正しくて立派な状態」ということで、その語源は「正々は軍旗が正しく整っている状態」、「堂々は陣構えの勢いが盛んな状態」とされています。
正面からぶつかり合う戦いではなくて、戦略を講じて、相手が思いもしない方法で守り、また攻めるのは場合によっては卑怯とも言われかねません。私が得意分野の一つとしている戦略は、見方によっては卑怯と捉えられることもあります。
策を講じたことが裏目に出て、かえって正々堂々と取り組んだほうが好結果につながるということもあります。
では、どのような戦い(交渉事でも勝ち負けがつけられてしまうこともある)をすればよいのかということですが、正々堂々が初めて記されたのは「孫子・軍学」です。紀元前500年頃の春秋時代の兵法書で、戦いの勝敗は天運に左右されるものではなく、人為によることを知り、勝利を得るための指針を理論化したものです。
「孫子・軍学」では、「正正の旗をうつなかれ、堂堂の陣をうつなかれ」と書かれていて、これは「整っている軍隊や指揮が上がって進軍してくる軍隊は迎え撃ってはならない」ということを示しています。
これを微表情に言い換えると、ただ表情によって相手の心の中を見抜こうとするのではなく、心の変化は勢いに大きな影響を与えることから、引くべきときは引く、押すべきときは押す、最善の状態で押し切るというように、最もよいタイミングをつかむ手法として活用することで、本来の持ち味を活かすことができるとの考え方をしています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕