微表情9 判定の封印と解放

微表情の研究は、ずっと継続してきたものの、自分が判定するために使うことは封印してきたところがあります。目で見たものが、すべて判定しなければならない画像分析の材料であったら疲れてしまいます。

人間の脳には“忘れる脳力”があります。これは脳の忘れるための能力という意味で、見聞きしたことを、すべて脳に入れる、脳に記憶として残すわけではなくて、初めから選択をしています。

そして、選択して脳に入れた記憶から役立つことを残すようにしますが、これは書棚の書籍を出し入れをすることによって、必要と思われるものを徐々に引き出しやすいようにして、あまり役立たないものを整理していくのと同様に考えることができます。

近寄ってくる人が多くて、その中から本心を言っている人を選択して、表の表情と心の中が合致している人とだけ付き合うということは、東京にいて、さまざまな業界の人との交流が盛んにあったときには、微表情の判定は重要なことでした。

ところが、岡山に移住して、出会う人も持ち込まれる話も極端に少なくなった中では、人の選択をしている余裕がなくて、付き合う前から“ダメ出し”をするようなことはしないと決めてきました。

そのために、後になって嫌な思いをすることも多々あったのは事実です。その場での微表情判定はいないものの、微表情をキャッチして記憶に残しておくことだけはしていました。これは微表情研究を長くしてきたことによって、自然に身についた技のようなものです。

見たものを明確に記憶しているというギフテッド(発達障害の特性能力)ではないので、正確さに問題はあるかもしれませんが、嫌悪、軽蔑、恐れ、驚きの微表情は特徴が出やすいので、案外と頭の隅に残っています。

嫌な思いをしてみて、後になって思い出すということであれば、曖昧性があることでも比較的間違いがない状態で「あの時は!」と思い起こすことができます。

そのような段階が過ぎて、いよいよ重要なことを進めるという段階になって、大切な人たちとの交流を深めていくために、私の場合は微表情の封印を解くことにしました。研究としての微表情判定は続けていて、それを活かしたいという人には伝えることを前提としてのことです。

そのため、私と付き合うことで心の底が見抜かれるのではないのか、という心配はしなくてよいのは、もちろんのことです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕