心拍数を高めるとミトコンドリアが活性化する

高齢者は1日に8000歩を歩くとともに、そのうち20分間の中強度の歩行を行うことが生活習慣病を予防し、平均寿命、健康寿命ともに延ばしてくれることが研究によって明らかにされています。中強度の歩行というのは「速度を高めながらも話しながら歩ける強度」と言われていますが、数値を示すと「心拍数110」とされています。
この心拍数になる速度で歩くと、酸素が不足した状態となって、通常では酸素を使って体内で行われているエネルギー産生が低下すると考えられがちです。しかし、この状態を続けていると実際には細胞内のミトコンドリアが活性されて、エネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が多く作り出されるようになります。つまり、少ない酸素量であってもエネルギーが多く作られるようになり、このエネルギーによって心臓の働きが高まっていきます。
この働きを活かして、心臓病で治療を受けている人に対して行われているのが心臓リハビリテーションとしての有酸素運動です。以前は心臓病の手術後には安静がよいと言われてきましたが、今では積極的に心臓リハビリテーションに取り組むことで治りが早く、再発率が低いことが知られています。
中強度の有酸素運動では誰もがミトコンドリアが活性されるものの、ATPの産生量には個人差があります。その差を生み出しているのは三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10の量です。α‐リポ酸は糖質をミトコンドリアに取り込む働きがあり、L‐カルニチンは脂質を取り込む働きがあり、コエンザイムQ10はミトコンドリアの中でATPを産生する補酵素の働きをしています。
三大ヒトケミカルは体内で合成されるものの、20歳代をピークに減少し続けます。年齢を重ねるほど不足してエネルギー産生が低下していくわけですが、それ以上にエネルギー産生が低く、有酸素運動をしても効果が得られにくい人がいます。こういった人は三大ヒトケミカルを補う必要があります。そこで三大ヒトケミカルは医薬品として使われてきましたが、今では食品としても使われることが許可されており、サプリメントとして誰もが補給することができるようになりました。