忘れる脳力1 覚えた端から記憶が消えるメカニズム

生活にとって当たり前のことであっても、重要なことであれば忘れることはないはずです。ところが、ドアの鍵の閉め忘れ、電気やガスの消し忘れ、定期券や携帯電話の持ち忘れといったことは起こりやすく、忘れないようにしようと反省しても何度も起こしてしまうことがあります。

また、何か用事があって2階に上がったのに何をしに来たのかわからないということもありますが、そのようなことが起こるのは、脳の仕組みと機能が関係しています。

記憶は、記銘、保持、想起の3つのプロセスを経て行われています。

記銘は、覚えることで、意識して情報を脳にインプットすることです。

保持は、脳にインプットした情報を維持し続けることです。

そして想起は思い出すことで、インプットした情報を引き出すことを指します。

記憶しても引き出して使うことができなければ、記憶したことにはなりません。

記憶したことは、すべて覚えておけたらよいと考えるかもしれませんが、脳には忘れるメカニズムがあります。一つは時間の経過によって記憶が薄れていくことで、数多くの情報が入ってくると1時間後には56%が消えるとされています。

ここまで多くの記憶が消えることがわかると、それ以降の記憶が心配になるところですが、1日後には74%、1週間後には77%、1か月後は79%と、時間の経過の割には大きく消えていないことになります。

これは記憶を机にたとえて説明されています。記憶したことは机の天板に置かれた紙のような状態で、全部に目を通していたとしても、半分以上を覚えていないという状態です。

この残った記憶は、机の引き出しの中に仕舞われて、必要なときに引き出して読み返すことになりますが、何度も読み返していることによって記憶が深くなっていきます。この引き出して読み返しているのは睡眠中に眠りが浅くなったレム睡眠のときで、繰り返して行われていくことで長く記憶されることになるのです。

記憶をするためには、眠ることが必要とされるのは、そういった理由があるのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕