「覚えておきたいことは忘れてしまうのに、忘れたいことは忘れることができない」ということがあります。それは年齢を重ねるほど増えていくことで、加齢によって認知機能が低下することが、その理由として一般にあげられています。
徐々に低下していくだけではありません。覚えることが減っていったなら、それと同じように忘れていくというなら理解しやすくても、なぜだか覚えることが減った分だけ、忘れたいことが増えていくようになるということが起こります。
認知症を例にすると、過去の記憶は残っているのに直近のことは記憶になくて、朝に食べたものを覚えていないだけでなく、朝食を摂ったことも覚えていないということもあります。それは短期記憶をする大脳皮質の機能が低下するために、最近の記憶が引き出せないということが起こっています。
それに対して、長期記憶のほうは引き出しに収納されているようなもので、就寝中に出し入れして整理がされています。もういらない情報は、捨てられて忘れられればよいようなものですが、その選択を自分の意思で行うことはできません。
過去に記憶に強く残るような出来事があると、それは忘れてはいけない重要な情報として脳に刻み込まれていて、何度も出し入れされています。その出し入れしている記憶が夢として現れているという研究報告もあるのですが、すべて記憶が夢として登場しているわけではありません。
夢に登場していないことでも出し入れはされているので、一時期であっても強い印象を残すこと、その忘れたい記憶が今にもつながっていることがあると、これは忘れてはいけない情報として深く刻まれているために、なかなか忘れることができなくなります。
悪夢のような出来事からは離れている、忘れていると思っていても、どこかに引っかかりがあると記憶として残るので、思い切って環境を変えるとか付き合いを変えるという決断がないと忘れることはできないということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕