快腸デザイン20 高齢者の腸内環境変化

高齢になると便通がスムーズにいかなくなる例が多くなります。その理由として、押し出す力の低下、食事量の減少、食物繊維の減少、運動不足などが、よくあげられています。

食べる量が減れば、それだけ便になる量が減り、食品に含まれる食物繊維が減ると腸壁が刺激されにくくなって、これが便通を悪くしていることは普通に考えられることです。

便の総量のうち70%ほどは水分で、これを除いた3分の1が食べ物のカス、3分の1が剥がれた腸粘膜、そして残りの3分の1が腸内細菌となっています。排出される腸内細菌には生きているものの他に、その死骸も含まれています。

腸内細菌のうち善玉菌が多いほど発酵によって便は多くなり、軟らかくなって通過しやすくなります。善玉菌は腸内が酸性環境であることによって、増殖しやすくなり、発酵も進んでいくようになります。

年齢を重ねると胃液が減るようになり、また胃液の酸性度が低下して消化力が低下していきます。日本人は消化液が多く必要になる食品をあまり食べてこなかったこともあって、高齢になると消化に時間がかかるようになり、脂肪が多い肉が食べられなくなるという変化が起こります。

胃液の酸性度は胃の中だけでなく、腸管内の酸性度にも影響を与えていることから、高齢者は腸管の酸性度の低下によって、善玉菌が増えにくくなっていきます。これは加齢によって普通に起こることです。

もう一つの理由は、自律神経のバランスの変化です。自律神経には心身を亢進させる交感神経と、逆に抑制させる副交感神経があります。腸の働きを高めているのは副交感神経で、腸からの吸収も蠕動運動も排泄も副交感神経が司っています。その逆の働きをするのは交感神経です。

高齢になると、交感神経の働きは低下しないのに対して、副交感神経の働きは低下します。そのために腸の働きが低下してしまうのです。これは仕方がないことなので、善玉菌を増やす食べ物の摂取、善玉菌が増えやすい温かな腸内環境を保つように、できるだけ身体を動かして血流をよくしておくことが大切になります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕